最新記事
少子化

「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

NO HOPES FOR THE FUTURE

2024年4月18日(木)17時50分
木村 幹(神戸大学大学院教授)

富裕層への嫉妬心が生む不安

もう1つ重要なことがある。それはインターネットを通じて進む情報の可視化が、これまで多くの人々には直接見ることができなかった富裕層の存在を人々に強く印象付けていることだ。

そして若年層において進む高学歴化は、彼ら富裕層に対する人々の考え方を大きく変える。かつての韓国では、豊かな家に生まれ、海外で高等教育を受けた彼らは特別な存在であり、だから人々は憧憬を持って彼らに接した。

しかし、現在の豊かで高学歴の若年層にとって富裕層はもはや特別な存在ではなく、社会の不公正さの象徴となっている。

こうして社会に羨望と嫉妬が渦巻き、人々は未来に対する大きな不安感にさらされる。そのありさまは、あたかも1人の希望に満ちた若者が、年老いて将来におののく姿とよく似ている。

若い頃には目標があり、成長の伸びしろもあるから、人々は貧しくても夢を持つことができる。

しかし、功成り名を遂げた老人は、それまでの蓄積により豊かな生活を送ることができるものの、既に成長の伸びしろを失っており、将来に明るい展望を持つことは難しい。将来へのおののきは心の不安を呼び、時に裕福な老人の今を破綻させる。

彼らにとって重要なのは、今の状況以上に社会の未来に対する明るい展望をいかにして取り戻すか、である。

少子高齢化と人口減少が社会の老いであるとするなら、韓国の人々はこの中からいかなる将来への希望を見いだすのだろうか。同じく老いゆく社会に生きる者として、その姿はわれわれの合わせ鏡になる。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米6月雇用、14.7万人増と予想上回る 民間部門は

ワールド

ロシア、ウクライナ徴兵事務所に空爆 オデーサ港でも

ビジネス

米新規失業保険申請6週間ぶり低水準、継続受給件数は

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中