最新記事
韓国総選挙

不人気すぎる韓国・尹錫悦大統領の自滅...国民の力が大敗した7つの理由

An Anti-Yoon Vote

2024年4月16日(火)12時50分
ミッチ・シン
韓国・尹錫悦大統領 REUTERS

韓国・尹錫悦大統領 REUTERS

<総選挙で野党が地滑り勝利。インフレ、身内びいき、お粗末な失策の連続で、尹は負けるべくして負けた>

4月10日に投開票が行われた韓国の総選挙は、最大野党の「共に民主党」が圧勝。任期を3年残す尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のレームダック化は避けられそうにない。

全300議席のうち「共に民主党」は175議席を獲得。与党「国民の力」は108議席にとどまった。前政権で法相を務めた曺国(チョ・グク)が立ち上げた革新系の「祖国革新党」(12議席)などを合わせて野党勢力は大きく議席を伸ばしたが、大統領の弾劾訴追や、大統領が拒否権を行使した法案の再可決、憲法改正案の可決が可能となる3分の2には届かなかった。

共に民主党は前回2020年の総選挙でも163議席を獲得し、保守系の野党勢力に大勝した。今回も国民の怒りと尹への反発を受けて単独で過半数を大きく上回り、尹は引き続きねじれ国会の対応を強いられることになった。

国民の力が今回も勝てなかった理由はたくさんあるが、特に重要な要因がいくつかある。そして、その大半は尹自身に帰するものだ。

◇ ◇ ◇


■大統領拒否権の乱用

元検事総長で法律の専門家である尹は、野党が支配する国会で可決された法案に対し、躊躇なく大統領拒否権を行使してきた。その数、大統領就任から2年間で9回。任期半ばで既に記録的な回数だ。

前大統領の文在寅(ムン・ジェイン)は、三権分立の下で大統領は国会の決定を尊重する必要があると考え、拒否権を行使したことはなかった。文の場合、自身が代表も務めた共に民主党が支配する国会と協働できるという利点もあった。

野党勢力が可決した法案の中でも、今年1月に尹の妻の株価操作疑惑を政府から独立した特別検察官に捜査させる法案に拒否権を行使したことは、国民から強い批判を浴びた。大統領が家族や側近が関与する不正疑惑を捜査させる法案に拒否権を行使したことは、過去になかったからだ。

また、誰かが犯罪を犯したら特別捜査に拒否権を行使する理由はないと尹が語っていたことから、大統領夫人は法律を超越する存在であると、世間に受け止められた。

その一方で、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表はこの3年間に収賄を含む複数の罪で起訴されており、李の妻も公職選挙法違反の罪で起訴された。

尹が自分の妻を対象とする捜査に拒否権を行使したことに対し、国民の怒りは雪だるま式に膨らみ、身内と政敵に対するダブルスタンダードを批判されている。妻へのいかなる捜査も拒否する尹の態度は、多くの国民にとって受け入れ難いものだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中