最新記事
ウクライナ戦争

ウクライナ戦争開戦から2年、NATO軍の元最高司令官が語る「敗北のシナリオ」

NO MORE AID, PUTIN WINS

2024年2月20日(火)19時18分
ブレンダン・コール

240227p24_CAL_02v4.jpg

ブリンケン米国務長官(中央)は昨年9月にウクライナで10億ドルの追加支援を発表したが BRENDAN SMIALOWSKIーPOOLーREUTERS

戦争が3年目に突入するなか、一部の米議員からはゼレンスキーに対し、ロシアと交渉して領土を割譲するよう求める声も高まっている。

だがワシントンのシンクタンク戦争研究所(ISW)の昨年12月の予測によれば、戦争が「凍結」された場合、あるいはもっと望ましくない「プーチン勝利」の場合には、悲惨な結果が待っている。

ウクライナが敗れれば、NATO圏の国境に沿う黒海から北極海に至る地域まで、ロシア軍の接近を許すことになる。

しかもロシア軍はウクライナ侵攻前より規模を拡大し、戦闘経験も積んでいる。

つまり、米軍のステルス機にしか突破できない高度な防空システムが必要になり、中国に対する抑止力が手薄になる。

さらにISWは、戦争が「凍結」されれば悪影響をもたらすと指摘する。

プーチンに対し、新たな戦争を仕掛けたり、NATOとの対決に備える猶予を与えることになるためだ。

「ウクライナの戦いは、アメリカにとっての戦いだ」と、マリナウスキーは言う。

「われわれはプーチンの勝利を見たくない。ウクライナとアメリカ、そして同盟諸国がこの戦争を今後1年以内に望ましい形で終結させられるかは、ウクライナ支援法案が成立するかどうかに懸かっている」

ウクライナは昨年6月に反転攻勢を開始した。

しかしウクライナや、武器を供与してきた同盟国が期待したような結果は得られなかった。

「何よりも、制空権を確保することが重要だ」と、ブリードラブは言う。

「われわれはウクライナが制空権を確保するために必要な支援を提供していない」

さらにブリードラブは、ウクライナには短距離兵器が提供されているものの、米陸軍戦術ミサイル(ATACMS)は最新版よりも能力面で劣る古い型が提供されていると語った。

「われわれはウクライナの勝利に必要なものではなく、戦いを続けるのに十分なものしか提供していない」と、彼は言う。

ヨーロッパ外交評議会のグスタフ・グレッセル上級研究員は、装甲機動車の提供が遅れたことがウクライナの反転攻勢の妨げになったと本誌に語った。

グレッセルによれば、アメリカ製のブラッドリー歩兵戦闘車やドイツ製のレオパルト戦車が供与されたものの、ウクライナ軍機械化旅団の結束や備えが今より優れていた段階で提供されていれば、もっと威力を発揮していただろうという。

東部ドネツク州バフムートでの戦いが長引いたために多くの経験豊富な兵士が失われたことも、ウクライナには大きな痛手だったと、彼は語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾、ロシアエネルギー制裁強化に協力表明 NGOの

ビジネス

当面は米経済など点検、見通し実現していけば利上げ=

ワールド

トランプ氏、CBS番組「60ミニッツ」出演へ協議中

ワールド

「影の船団」の拿捕、ロシアの資金源断つ欧州の新戦略
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中