最新記事
ウクライナ情勢

アウディーイウカ制圧「ロシアは大きな犠牲を支払った」

Russia's Staggering Avdiivka Losses Laid Bare by Ukraine

2024年2月19日(月)16時09分
エリー・クック
アウディーイウカからの撤退を決めたウクライナ軍

ウクライナ軍は2月17日、アウディーイウカからの撤退を決めた 3Rd Assault Brigade/Handout via REUTERS

<完全制圧に向けて、ロシア軍は最後までかなり無茶をした形跡がある。それが今後の戦いに悪影響を及ぼす可能性も>

ウクライナ軍は2月17日、ロシアとの攻防戦が続いていた東部ドネツク州の主要都市アウディーウカからの撤退を発表した。しかしこの攻防戦で、ロシア側は4万7000人の兵士と360両の戦車を失った、とウクライナ軍は指摘した。

アウディーウカを管轄するウクライナ軍タブリア部隊の司令官、オレクサンドル・タルナフスキー准将が18日に語ったところによれば、ロシア軍の大規模な攻撃が始まった昨年10月10日〜今年2月17日の間に、ロシア側は4万7186人の兵士と360両の戦車、748台の装甲戦闘車両を失ったという。

ロシアはさらに、248基の砲撃システム、ジェット機5基を失ったとも、タルナフスキーは述べている。

 

本誌はこの数字の真偽を確認できていない。ロシア国防省にも電子メールでコメントを求めたが、回答は得られていない。

ともあれこの数字は、ロシア軍がアウディーウカ制圧のために支払った代償がいかに大きかったことを示している。ロシア大統領府は18日、ロシア軍がアウディーウカを完全に「解放した」と発表した。

ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は17日、「包囲を回避し」、兵士たちの命を救うための撤退だと述べた。

「わが軍の兵士は軍人としての義務を立派に果たした。ロシア軍の最強部隊を打倒するためにやれることはすべてやり、敵の人的資源や装備に大きな損失を与えた」とシルスキーは声明で述べた。

戦いは10年前から始まっていた

戦闘の激しさから、アウディーウカは「挽き肉製造機」と呼ばれた。それほど多くの死傷者が出たということだ。

アウディーウカの攻防戦ではウクライナ軍も多くの兵士と兵器を失った。親ロ派の武装勢力が活動していたアウディーウカでは、戦闘は約10年前から続いていた。2022年秋にはロシア政府が一方的にドネツク州を含むウクライナ東部4州の併合を宣言したが、ロシアはその全域を掌握するには至っていない。

今回の攻防戦の初期段階で、ロシアは数多くの装甲車両を失った。欧米の専門家は、装甲車両を温存するためにロシア軍が歩兵中心の攻撃に移行すると考えた。

だがタルナフスキーは今月に入り、ロシア軍がアウディーウカ周辺で「こちらの歩兵部隊を攻撃するため装甲部隊投入を進めている」と述べていた。タブリア部隊の報道官も当時、ロシア軍が「アウディーウカの攻撃に、装甲車両の使用を増やし始めた」と本誌に語っていた。ウクライナ軍の防衛線を突破するため、温存すべき装甲車両も投入してきたのだ。

英国防省は16日、アウディーウカの攻防戦でロシア軍は戦車と歩兵戦闘車を少なくとも400両失ったとの見方を示した。

「ウクライナの防衛部隊は多大な損害を敵に与え、侵攻作戦の前線となっている他の地域で使うはずだったロシアの予備部隊にも、かなりの打撃を与えた」とタルナフスキーは18日に述べた。それは、今後の作戦にひびくかもしれない。

そうは言っても、ロシアにとってアウディーウカの制圧は象徴的な意味でも戦略的にも大きな戦果だ。これにより、ロシアは兵站を拡大し、さらに西の重要拠点に向けた進軍の道を開けることになる。


20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スペースXの米スパイ衛星網構築計画、ノースロップが

ワールド

米高官、ラファ侵攻計画に懸念表明 イスラエルと協議

ワールド

イスラエルの長期格付け、「A+」に引き下げ =S&

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中