最新記事
ウクライナ戦争

要衝アウディーイウカでロシア軍が突破口 「掘り崩し戦術」で市内へ進攻

Avdiivka on Edge as Russians Proclaim 'Breakthrough'

2024年1月25日(木)17時25分
デービッド・ブレナン
プーチン

3月に大統領選挙を控え、前線からの朗報が欲しい独裁者の戦い方とは(1月23日、優秀な親子を招いた「全家族フォーラム」に出席したプーチン) Sputnik/Sergei Karpukhin/Pool via REUTERS

<クリミア併合のときから攻め続けながら長く膠着状態にあったアウディーイウカの前線に動きがあった>

ロシア軍はこの数カ月、ウクライナ東部ドネツク州の要衝アウディーイウカ(旧アフディフカ)に猛攻をかけてきた。ここを落とせば一気に戦局が有利になるからだが、ウクライナ側の守りは堅く、前線は膠着状態にあった。だがここに来て、この都市の南側で大きな進展があったと、ロシアの軍事ブロガーが勝報を伝えている。

ロシア軍はアウディーイウカ南部の住宅地を攻撃し、「突破口を開いた」と、「リバル」をはじめとする複数のロシアの軍事ブロガーがテレグラムのチャンネルで伝えた。本誌の調査ではこの情報を確認できず、現在ロシア国防省にメールで問い合わせ中だ。

ここ数カ月アウディーイウカ北部では、ロシア軍とウクライナ軍が激しい攻防戦を展開してきた。北部にはヨーロッパ最大規模のコークス工場群が並び、その掌握がロシアの狙いとみられていたが、難攻不落の巨大な工場群が立ちはだかる北部より、小さな家々が立ち並ぶ南部のほうが攻略しやすいとみて、ロシアは一転南部に兵力を集中、ウクライナの防衛戦を突破したと、リバルは伝えている。

瓦礫の山を手に入れる

ロシア軍は既にアウディーイウカ市内に進み、ウクライナ軍と激しい市街戦を展開していると、テレグラムのもう一人の主要な軍事ブロガー「サーティーンス」は述べている。それによれば、ロシア軍が用いたのは文字どおりの「掘り崩し戦術」で、市外からウクライナ軍の陣地の下までトンネルを掘り、中に爆発物を敷き詰めて遠隔操作で爆破した、というのである。

いずれのチャンネルも、両軍はアウディーイウカ南部のレクリエーションセンター「ツァルスカヤ・オホタ」近くで激しい戦闘を行い、「わが軍はここを掌握した後、周辺地域に進撃を続けている」と述べている。

ウクライナ側の軍事ブロガーも同様の分析をしている。

「アウディーイウカ北部はAKHZ(コークス工場群)で守られているが、南部は平屋や二階建ての住宅が立ち並び、砲撃に弱い」と、X(旧ツイッター)のアカウント「タタリガミUA」(UAはウクライナの国名コード)の管理人は指摘した。「ロシア軍はこの地域を奪えなければ、砲撃で消し去り、歩兵隊を送り込んで、瓦礫の山を手に入れるだろう」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、米韓首脳会談の成果文書に反発 対抗措置示唆

ワールド

北朝鮮、米韓首脳会談の成果文書に反発 対抗措置示唆

ビジネス

世界の投資家なお強気、ポジショニングは市場に逆風=

ワールド

ガザ和平計画の安保理採択、「和平への第一歩」とパレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中