最新記事
NATO

ロシアの脅威を知り尽くしたスウェーデンがNATOを強くする

What Sweden Adds to NATO's Military Arsenal

2024年2月29日(木)18時39分
デービッド・ブレナン

陸軍はまた、口径155ミリのアーチャー自走榴弾砲を26台保有している。うち8台はウクライナに供与されたが、この榴弾砲は対砲兵攻撃を回避できる機動性の高さを特長とし、砲撃地点に到着して、弾を装填して3発撃って、撤収するまでに75秒足らずしかかからない。発射角度も変えられ、3発を同じ目標に対して違う軌道で撃ち、同時に着弾させることも可能だ。

この榴弾砲に搭載可能な砲弾のうち、最も射程距離が長いのは、アメリカ製のM982エクスカリバーで、最長で50キロ先の目標を攻撃できる。

とはいえ、スウェーデンがNATOにもたらす最大の貢献は、空軍及び海軍力の増強だろう。この国は3200キロ超に及ぶ入り組んだ海岸線、バルト海、そして北極圏も含む領空を防衛するために、空と海の守りを固めてきた。

スウェーデン空軍は国産の戦闘機サーブJAS39グリペンを100機前後保有する。グリペンは西側世界で最も多くの用途に使える戦闘機の1つと見なされ、ロシアの侵攻を想定した設計になっているため、ウクライナへの供与も検討されている。

RUSIの研究員、ジャスティン・ブロンクは2023年2月に、グリペンの特徴を次のように解説した。「明らかにロシア(の地対空ミサイル)迎撃のために開発された超音速ジェット機で、極めて低空を飛行でき、電子戦システムを内蔵している。整備をしやすい利点があり、車両で移動する機動部隊が広範囲に分散した基地から運用できる」

バルト海の制海権確保に果たす役割

グリペンは損傷した滑走路や高速道路でも離発着が可能で、ウクライナ軍に供与されれば、この点も大きな強みとなるだろう。

スウェーデン空軍はまた、偵察機4機を保有する。シギント機能(電子信号などの傍受による諜報機能)を持つ2機のガルフストリームG4と、2機の空中早期警戒管制機・サーブ340AEW&Cだ。

地上における防空システムとしては、アメリカ製の地対空防衛システム、パトリオットを4カ所に配備していて、射程距離最大120キロ前後のPAC3で敵のミサイルを迎撃できる。より短距離からの攻撃には、ドイツ製の地対空ミサイルIRS-T SLSや、国産の中距離全天候型防空ミサイルRBS23、同じく国産の携帯式地対空ミサイルRBS70で対応可能だ。

NATOがバルト海の制海権を確保する上では、スウェーデン海軍は重要な役割を担うことになる。ロシアはバルト海に臨む重要な海軍基地を2カ所保有している。サンクトペテルブルクと、リトアニアとポーランドに挟まれた飛び地に位置するカリーニングラードだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中