最新記事

北欧

フィンランドがNATOに加盟すればプーチンは北欧にも侵攻する

'You Cannot Appease Putin,' Says Former Finland Leader As Country Considers Joining NATO

2022年3月8日(火)16時50分
イワン・パーマー

ロシア(緑色)と1300キロの国境を接するフィンランドのNATO加盟は極めて危険 pawel.gaul-iStock.

<第二次大戦後、西側と旧ソ連の間の中立国として歩んできたフィンランドが、ロシアのウクライナ侵攻を見てNATO加盟を検討しはじめた。自分もロシアに攻められ北欧に戦火を招く危険と隣り合わせだ>

フィンランドの元首相アレクサンデル・ストゥブが取材に応じ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「なだめることなどできない」と危機感を示した。フィンランドは今、隣国ロシアから攻撃を受けるリスクを冒しながらNATO加盟を検討している。

ストゥブは、2014年から2015年にかけてフィンランドの首相を務めたほか、外相も歴任した。スペインのニュースサイト「エル・コンフィデンシアル」の取材に答えたストゥブは、プーチンが大統領の座にとどまり続ける限り、東欧が平常に戻ることはないだろうと警告した。

ストゥブによれば、ロシア政府が何かを約束しようと、プーチンはウクライナから手を引くことはなく、世界に影響を及ぼすおそれがあるという。

「プーチンをなだめることなどできない。今さら引き返せない。我々は後戻りできる地点を過ぎてしまった」とストゥブは言う。

「停戦に向けた努力をすることはできる。だが、プーチンが権力の座から追われない限り事態が平常に戻ることはない。そして体制転換は、ロシアの内側からしか起きない」

ロシアは「大きな北朝鮮」に


プーチンは今、ロシアを「徹底的に、完全に周囲から孤立した国」にするリスクを冒している。ウクライナ侵攻に対する制裁で、経済や輸出品にとどまらず、スポーツや文化、さらにはエネルギーや運輸などの分野でも孤立のリスクがある。

「ロシアは、巨大な北朝鮮になろうとしている。いかなる形であれ、この国と貿易を行ったり協力関係を結んだりしたいと思う者は誰もいなくなるだろう」とストゥブはいう。フィンランドでも、ロシアとの貿易の10%が「一瞬で消えた」。

「ヨーロッパに住む我々はエネルギー価格の上昇という代償を支払っているが、ウクライナの人々が自由のために命を懸けていることを思えば、とても安いものだと思う」

報道によれば、フィンランドが現在、スウェーデンと共にNATOへの加盟を検討しているという。ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにして、安全保障を強化する必要に迫られたためだ。

ロシアと1300キロ近くにわたって国境を接するフィンランドがNATO加盟に踏み切った場合、西側諸国とロシアの間で中立を守ってきた第二次大戦後の同国の位置づけは正式に終わりを迎えることになる。

とはいえフィンランドは、数十年前からすでに中立地帯という立場からの脱却を始めていた。ソ連崩壊後は欧州連合(EU)に加盟し、軍事的選択を迫られる場面ではNATOの支援に回り、今回のロシアの侵攻ではも、ウクライナに武器や弾薬を供与している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中