最新記事
ウクライナ情勢

なぜアメリカは今、ウクライナのために「敗戦」を望むか

Does the US Actually Want Ukraine to Defeat Russia?

2023年11月28日(火)18時48分
デービッド・ブレナン

西側諸国に支援疲れが広まっていることは、ウクライナ側も感じ取っている。ウクライナ保安庁の元幹部で現在はウクライナ議会の顧問(国家安全保障・防衛・諜報担当)を務めるイワン・スチューパクは本誌に対して、「この戦争を終わらせるためには、ウクライナは1991年の国境線を回復すること以外にも幾つかの選択肢を議論しなければならないのかもしれない」と述べた。「もしかすると、妥協点もあるのかもしれない」

ロシアに対する不信感が、依然として大きな問題として立ちはだかる。「ロシアはこれまで一度も約束を守ったことがない」とスチューパクは言う。「どうやってロシアに約束を守らせるのか」

あからさまな侵略行為や領土占領を行ったロシアが何の罰も受けずに逃げおおせることになれば、「世界に向けて、法の秩序や国家主権を否定するメッセージを発信することにもなる」。

 

政治環境はロシアに有利?

だがロシアも既に戦略的に大きな敗北を喫していると、カプチャンは言う。「プーチンはウクライナで負けた。私たちはそれを知っている。彼はよくても、ウクライナの領土の一部とという『残念賞』を手にするだけだ」

ハースもカプチャンも、7月に行われたロシアのセルゲイ・ラブロフ外相との極秘会談に出席していたと報じられている。「現時点では、ロシアは事態は政治的に自分たちに有利な方向に進んでいるという前提で議論を行っていると思う」とハースは述べた。

ロシアはアメリカの世論調査を見て、ポピュリズムが高まりつつあることを知っている。プーチンの戦略は詰まるところ、一年後の米大統領戦でドナルド・トランプが勝利するかどうかを見届けることなのだろう、とハースは言う。

カプチャンは、ウクライナと西側諸国はプーチンのように「長期戦略」を考えるべきだとして、次のように指摘した。

「戦争を終わらせ、ウクライナを再び繁栄への軌道に乗せ、プーチンが退陣するのを待って、ロシアが和平交渉でウクライナに領土を返還する日が訪れることを期待する」のだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中