最新記事
ウクライナ情勢

ロシア軍にもウクライナ軍にも加わる、ネパール「グルカ兵」...「イデオロギーとは無関係」な3つの理由とは?

2023年7月3日(月)12時45分
ビラット・アヌパム(ディプロマット誌)
グルカ兵

Peter Rhys Williams -Shutterstock.com

<公式ルートだけでなく、民間人の資格で外国の軍隊に加わるネパールの若者たち。外国部隊の「長い伝統」について>

ロシアのウクライナ侵攻開始からほぼ1カ月後、プラタップ・バスネトというネパール人の若者がウクライナのために戦っているという報道が同国内で注目を集めた。

ネパール外交の旗印は中立と非同盟だが、ウクライナ問題では欧米側に立ち、ロシアの軍事攻撃を批判していた。だが最近、ネパールの若者がロシア軍にも加わっている証拠が出てきた。

ロシア当局が5月16日、1年間の兵役契約を結べばロシア国籍の取得を容易にすると発表して以来、何百人ものネパールの若者が契約兵としてロシア軍に入隊した。なかにはネパール軍の元兵士もいる。

そのうちの1人は、退役後ドバイで警備員をしていたが、より魅力的な条件に引かれてロシアに向かった。観光客としてモスクワに入り、新兵募集センターで入隊したという。入隊基準が引き下げられたおかげだと、彼は通信アプリ「テレグラム」で筆者に言った。

「以前はロシア語の能力をチェックされたが、今は英語でもOKだ」

ロシア軍に参加するネパールの若者の人数について、公表されたデータはないが、彼らが民間人の身分で入隊していることは明らかだ。

ネパールには、正式なルートを通じてイギリスやインドに若者を兵士として送り込んできた長い伝統がある。「グルカ兵」としてイギリス軍に初めて加わったのは1815年。

インド独立後、グルカ兵はインド軍に引き継がれた。1949年以降はやはり旧宗主国イギリスとの縁で、シンガポール警察にも派遣された。

だが、それ以外の国に若者を外国の軍隊に派遣する2国間協定は結んでいない。国連平和維持軍(PKF)に参加する兵士の人数は世界第2位だが、国連以外の任務には軍隊を派遣していない。

中立を基本とするネパールの外交政策に反するからだと、プルナ・チャンドラ・タパ元国軍参謀総長は筆者に言った。だがネパールの若者は公式ルートだけでなく、民間人の資格で外国の軍隊に加わることもある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中