最新記事
事故

潜水艇「タイタン」の残骸引き揚げ、「人の一部らしきもの」を回収

Officials recover "presumed human remains" from Titan sub wreckage

2023年6月29日(木)14時11分
ケイトリン・ルイス

深海の水圧で圧壊した潜水艇タイタン(日付不明)  OceanGate Expeditions/REUTERS

<5人の乗員全員が絶望的となった潜水艇圧壊の原因を探るための残骸が、深海から引き揚げられた>

米沿岸警備隊は6月28日、大西洋に沈む豪華客船タイタニック号の見学ツアー中に圧壊した潜水艇「タイタン」の残骸引き揚げ作業で、複数の証拠を回収したと発表した。

【動画】ロシア巡洋艦「モスクワ」の「最期」

証拠には潜水艇の破片や「人間の遺体とみられるもの」が含まれ、今後これらの証拠について米海事調査委員会が分析を行う。沿岸警備隊によれば、タイタンの残骸は28日にカナダ東部ニューファンドランド島セントジョンズの港に引き揚げられ、今後アメリカに移送されて、詳しい調査が行われる。残骸と一緒に発見された「人間の遺体とみられるもの」についても、アメリカの医療専門家が「正式な分析を実施」する。

海事調査委員会のトップを務めるジェイソン・ノイバウアー大尉は、沿岸警備隊が発表した声明の中で、「(今回発見された)証拠は、この悲劇の原因を突き止める上で、きわめて重要な情報となるだろう」と述べた。「タイタンの事故につながった原因を理解し、二度とこのような悲劇が起きないようにするために、まだやらなければならないことは沢山ある」

遠隔操作の探査機で捜索

タイタンは残骸が発見される10日前の6月18日に、タイタニック号を見るために海底に潜った際に圧壊したとみられている。AP通信によれば、タイタンの残骸は水深およそ3800メートルの海底に沈んだタイタニック号の船首から約490メートル離れた場所で見つかった。

米オーシャンゲート社が所有・運営するタイタンには、イギリス人冒険家のヘイミッシュ・ハーディング、パキスタン富豪一家の出身でイギリス人実業家のシャザダ・ダウッドと息子のスレマン、フランス人探検家のポール・アンリ・ナルジョレとオーシャンゲートのストックトン・ラッシュ最高経営責任者の5人が乗っており、5人とも死亡したとみられている。タイタン圧壊の原因は、いまだ明らかになっていない。

28日にセントジョンズ港にタイタンの残骸が引き揚げられると、大きく破損した破片の写真がインターネット上に出回った。AP通信によれば、残骸の捜索は米ペラジック・リサーチ・サービシズ社が所有する遠隔操作の探査機によって行われた。同社は28日に、探査機の乗組員らが「沖合での作業」を終了したと声明を出している。

ペラジック・リサーチ・サービシズは声明の中で、「乗組員らは肉体的にも精神的にも過酷な状況の中、遺体を遺族の元に帰すため、10日間休むことなく作業を行ってきた」と述べた。

AP通信が28日、タイタンの圧壊について捜査を主導している米沿岸警備隊の代表にコメントを求めたが、返答はなかった。タイタンの残骸についての最新情報は、米海事調査委員会のウェブサイトで確認することができる。

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中