最新記事
潜水艇

タイタニック潜水艇タイタンは前にも「行方不明」になっていた

Revelation Titanic Sub Previously Went Missing Raises Questions

2023年6月22日(木)15時30分
ジュリア・カーボナロ

オーシャンゲート社が運営するタイタニック号観光ツアー中の潜水艇タイタン OceanGate Expeditions/REUTERS

<深海のタイタニック観光ツアーを体験したCBS記者も安全性に問題があることに気づいていたが、対策は取られなかった>

大西洋の海底に眠る豪華客船タイタニック号の見学ツアーで消息を絶った潜水艇タイタンは、以前にも海上と連絡が取れなくなり、位置を確認できなくなったことがあった。昨年ツアーを体験したテレビの記者がこの問題を報告していたにもかかわらず、当時はほとんど注目されず、重大事故を招く結果となった。ソーシャルメディア上では、運航会社とメディアの責任を問う激しい批判の声が上がっている。

タイタンは今月18日朝に通信が途絶え、位置を確認できなくなって4日経つ。懸命な捜索が続いているが、酸素は通常4日分しか搭載していない。

デービッド・ポーグ記者は昨年夏、CBSの番組のレポーターとして、深海探検専門のツアー会社、オーシャンゲートが所有し、運航するこの潜水艇に乗り込み、タイタニック号の残骸が眠る海底への潜航を体験した。

タイタンに乗り込んだポーグは潜水艇の頑丈さに疑問を持ち、その辺にある物で間に合わせる「急ごしらえの脆弱さ」があるのではないかとオーシャンゲートのCEOであるストックトン・ラッシュに問いただしたが、ラッシュはそれを真っ向から否定した。

記者の警告は生かされず

ポーグはまた、乗客から聞いた話として、以前のツアーで通信が途絶え、2時間半にわたって海上と連絡が取れなくなったという体験談を伝えた。

ポーグが体験した時と同様、今回のツアーでも、タイタンを搭載した母船は、カナダ・ニューファウンドランド島から出航。米マサチューセッツ州ケープコッドから約1450キロの沖合で、タイタンを海中に投入した。だが今回は、海底まで半ばほど潜航した時点で通信が途絶え、母船はタイタンの位置を確認できなくなった。

タイタンには、乗員乗客5人が乗り込んでいる。乗員はオーシャンゲートのラッシュCEO、フランス人操縦士のポール=アンリ・ナルジョレ、乗客はイギリスの億万長者で探検家のハミッシュ・ハーディング、パキスタンの実業家シャーザダ・ダウードとその息子のスールマンだ。

この5人の救出のタイムリミットが刻々と迫るなか、昨年11月に放映されたポーグ記者の体験レボートがなぜ事故防止に生かされなかったのか、ソーシャルメディア上で疑問の声が上がっている。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中