最新記事
ワグネル

ロシアはウクライナを武装解除するつもりで先進兵器大国にしてしまった──ワグネル創設者

Wagner Group chief admits Ukraine war has completely backfired

2023年5月25日(木)18時06分
イザベル・ファン・ブリューゲン

ワグネルはバフムトからの撤収し、ロシア軍と交代すると発表するプリゴジン (5月25日、ウクライナ東部バフムト) Press service of "Concord"/REUTERS

<武装解除の名目で開始した特別軍事作戦なのに裏目に出た、とプリゴジンがインタビューで上層部批判>

ロシアによる対ウクライナ「特別軍事作戦」は、これまでのところロシア政府が期待したような成果を達成できておらず、ウクライナは今や世界で最も強力な軍の一つに成長した――ロシアの民間軍事組織ワグネルの創設者であるエフゲニー・プリゴジンは5月23日、こう指摘した。ワグネルは、ウクライナの激戦地に数多くの戦闘員を派遣している。

兵士の命も消耗品扱い...残虐傭兵部隊「ワグネル」は敵にも味方にも容赦なし【注目ニュースを動画で解説】

プリゴジンは親ロシア派ブロガーのコンスタンティン・ドルゴフとの77分に及ぶインタビューをインターネット上で共有。この中で、ロシア軍の指導部を激しく非難した。

戦争が長引くなか、プリゴジンとロシア政府の関係は悪化の一途を辿っている。プリゴジンは、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相とバレリー・ゲラシモフ参謀総長を繰り返し非難。彼らがワグネルの戦闘員に必要な弾薬を供給していないと主張し、それは国家への反逆に等しいと言った。

プリゴジンは問題のインタビューの中で、ロシアはウクライナの「武装解除」を目指していたのに、逆にウクライナを世界最高レベルの兵器で武装させることになったと指摘した。ロシアのウラジーミル・プーチンは2022年2月24日にウクライナ侵攻を開始した際、ウクライナを武装解除すると言っていた。

ウクライナ軍は「世界最強の軍の一つ」

「特別軍事作戦の開始時点でウクライナが保有していた戦車が500台だとすれば、今はそれが5000台に増えている。十分な戦闘能力がある要員が当初2万人だったとすれば、今は40万人に増えている。我々はウクライナを武装解除するどころか、逆に武装させてしまった」

ウクライナはロシアと戦うために、西側諸国から大量の兵器や軍装備品を供与された。その中にはミグ29戦闘機や対空システム、戦術ドローン、ロケットシステム、榴弾砲や砲弾が含まれている。

ウクライナは今や「世界最強の軍の一つだ」とプリゴジンは行った述べ、さらにこう続けた。「彼らは高度に組織化され、高度な訓練を受け、情報活動のレベルも高く、さまざまな兵器を持っている。またロシア製にもNATO製にも通じている」

プリゴジンはまた、ワグネル・グループは能力面で「世界一の」軍隊だとも述べた。

さらに彼はこのインタビューの中で、ショイグとゲラシモフの辞任を要求し、代わりにミハイル・ミジンツェフ大将とセルゲイ・セルゲイ・スロビキン大将を国防省と参謀総長に任命すべきだと示唆した。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中