最新記事
アメリカ政治

米政府に忍び寄るデフォルトの危機 株式から社会保障まで広範囲な影響、市民に及ぼす痛みは?

2023年5月25日(木)12時14分
ロイター
1ドル紙幣

米連邦政府の債務上限問題を巡る政治的対立で政府がデフォルト(債務不履行)に陥り、資金繰りに行き詰まれば、メディケア(高齢者向け医療保険制度)への支払いが止まったり株式市場が急落したりするなど、一般市民が即座に広い範囲で痛みを被る。2022年2月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

米連邦政府の債務上限問題を巡る政治的対立で政府がデフォルト(債務不履行)に陥り、資金繰りに行き詰まれば、メディケア(高齢者向け医療保険制度)への支払いが止まったり株式市場が急落したりするなど、一般市民が即座に広い範囲で痛みを被る。

米政府がデフォルトになった場合の市民への影響をまとめた。

最初に打撃を被る場所

イエレン財務長官によると、議会と政府が連邦政府の債務上限引き上げで合意できなければ、財務省は6月1日にも支払いの不履行が発生し始める可能性がある。

そうなれば財務省は、世界の金融システムを支える米国債の支払いを続ける上で厳しい圧力にさらされる。支払いが滞れば、米金融業界は歴史的な大混乱に陥りかねない。ムーディーズ・アナリティックスのエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「正に大惨事になるだろう」と話す。

財務省は米国債保有者に対して期限通りに支払いを行おうとするとの見方が一般的だが、たとえ支払いを実施したとしても、今回の危機を招いた政治の機能不全によって米経済の見通しに対する不信感が生まれ、住宅から老後資金の運用資産まで、市民が保有するあらゆるものの価値が下落するとザンディ氏はみている。

金利が上昇すれば、住宅や車を買ったり、事業立ち上げのために資金を借りたりするのが難しくなる。

ザンディ氏によると、数日以内には金融の大混乱が主な要因となって米経済はリセッション(景気後退)に向かうとみられる。

一層の悪化も

通常、景気後退に伴って発生する大規模なレイオフ(一時解雇)がデフォルトから数週間後に発生するだろう。それよりも早く、連邦政府の支出が停止する可能性がある。

最初に苦境に陥るのは病院や保険会社などだろう。シンクタンクのバイパルチザン・ポリシー・センターによると、6月1日にはメディケアを通じて約470億ドルの支払いが予定されている。

メディケアの資金は米国の医療費の5分の1を賄っているため、スタッフの給与や経費の支払いなどができなくなる医師が出てきそうだ。こうした支払いができなくなると、手術など治療のスケジュールで苦しい判断を迫られることもあり得る。調査グループ、KFFのトリシア・ニューマン氏は「こうした状況が長引けば長引くほど、混乱が大きくなるだろう」と述べた。

SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中