最新記事

ジェンダー格差

日本の男女の収入格差は、先進国で断トツのトップ

2022年11月9日(水)11時15分
舞田敏彦(教育社会学者)
収入の男女格差

ジニ係数で0.4を超える富の格差は「危険な状態」と判断される hyejin kang/iStock. 

<不平等度を可視化する「ジニ係数」で見てみると、日本の男女間の収入格差は常軌を逸したレベル>

ジニ係数という指標をご存知の方は多いだろう。分布のズレの大きさを可視化する指標で、「人口の上では○%を占めるに過ぎない富裕層が、国内の富の△%を占有している」といった現実の不平等度が、0.0から1.0の範囲の数値で表される。

近似していて然るべきにもかかわらず、現実には大きく隔たっている分布は数多くある。例えば、有業男女の収入分布だ。やや古いが、2012年のOECDの国際成人学力調査「PIAAC」から、フルタイム就業者(15~65歳)の年収分布を取り出せる。日本のデータを見ると、上位25%以上の割合は男性では48%であるのに対し、女性では17%でしかない。その一方で、女性では最下層のグループ(下位10%未満)が25%を占める。

同じフルタイム就業にもかかわらず、年収の分布は男女で大きく異なっている。この程度をジニ係数で数値化すれば、収入の男女格差のレベルを測ることができ、国ごとの比較も可能になる。その方法を説明する。

data221109-chart01.png

<表1>は元データだが、6つの階層の分布(相対度数)は男女でほぼ逆となっている。男性は高収入層の比重が高いが、女性は低収入層が多い。同じフルタイム就業にもかかわらず、この違いは驚きだ。賃金に性差があるのに加え、女性には家事や育児等の負荷があるためだろう。

右欄の累積相対度数は下位からの数値を積み上げたものだが、これをグラフにすることで、年収分布のズレの大きさが視覚化される。<図1>は横軸に女性、縦軸に男性の累積相対度数をとった座標上に、6つの階層(G1~G6)のドットを配置し、線でつないだものだ。この曲線をローレンツ曲線という。

data221109-chart02.png

横軸と縦軸、すなわち男女の年収分布のズレが大きいほど曲線の底は深くなる。ジニ係数は、この曲線と対角線で囲まれた面積(色付き)を2倍した値で,極限の不平等状態の場合は、四角形の半分(0.5)を2倍して1.0となる。逆に完全平等の場合,曲線は対角線と重なるのでジニ係数は0.0となる。現実は、この両端の間のどこかに位置することになる。

<図1>は2012年の日本の現実だが、色付きの面積は0.238なので、ジニ係数はこれを2倍して0.476となる。一般にジニ係数は0.4を超えると、偏りが大きいと評価される。富の格差のジニ係数が0.4を超える国は、暴動が起きかねない危険な状態と判断される。ここで出したのは男女の収入格差のジニ係数だが、日本のそれは常軌を逸して大きいと言っていいだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エリオット、LSEG株大量取得か 経営改善へ協議と

ビジネス

中国1月自動車販売19.5%減、約2年ぶり減少幅 

ワールド

米下院、トランプ関税への異議申し立て禁止規定を否決

ビジネス

深セン市政府、中国万科向けに116億ドルの救済策策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 5
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 9
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中