最新記事

統一教会

選挙応援「ダサい」、親への怒り、マッチングサイト...統一教会2世たちの苦悩【石戸諭ルポ中編】

JUDGMENT DAY

2022年9月22日(木)11時07分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

「あぁ、その怒りは分かりますね」と理解を示したのは、統一教会信者が起業した会社で働く20代の2世信者だ。

「僕はそれでも、信仰には大切なところはあると思っています。全部は信じていないけど、自分のアイデンティティーでもある」

断っておくと、彼の会社は違法行為には加担していないし、統一教会の支援の下で献金目的につくられたものでもない。信者以外の従業員も働いており、私が確認した範囲内ではあるが、内輪の勧誘活動もない。あくまで信者が自分のやりたいビジネスのために起業したというだけだ。

彼の親は数千万円以上の献金をしている。そんな親の姿を見て育ったせいか、彼やその周囲の2世は献金には冷淡で「全くしない無料会員」や「気が向いたらする」程度の信者も少なくない。

2世の中には韓国にある統一教会系の鮮文大学への留学組もいる。彼らは一般企業への就職を諦めざるを得なくなり、2世のコミュニティーの中で職を探したという経験をすることになる。

「だって、就職も結婚も普通には無理でしょ。僕も2世と結婚したいです。だって、普通の人と交際しても、いつかは信仰や家族を紹介しないといけないし、相手の親に説明も必要ですよね? この状況で、結婚が許されるとも思えません」

彼らの価値観に合わせたのか、教団の姿勢にも変化が見られる。

その象徴が結婚だ。文の死去以降、結婚は教団が作り上げたマッチングサイトに移行した。親同士が最初に会って当人たちが出会うかを決めたり、自分や相手に求める信仰の度合いを記したりするのが特色だが、基本的な中身は他のマッチングサイトと変わらない。

信仰の度合いは、最も熱心なのが「伝統」、平日は何もせず礼拝やイベントに顔を出す「自律」、ごくたまに活動する「妥協」の三段階に分けられている。当然といえば当然だが、平日早朝から儀式をする「伝統」を選ぶ割合は少なくなり、日常生活と折り合いをつけられる「自律」や「妥協」を選ぶ信者が多くなる。

昔は神の意思に反するとされていた離婚も認められるようになってきた。

彼は言う。

「統一教会も過去を反省して、偽装勧誘や高額献金、政治活動の問題点を明らかにしたほうがいい。僕たちはただ信仰と共に穏やかに暮らしたいだけだから......」

※ルポ後編:統一教会と関係を絶つとは何を意味するか。カルト対策に魔法の杖はない に続く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で

ワールド

全米で反トランプ集会 移民政策やイラン戦争に抗議 

ワールド

米国防総省、イランで数週間にわたる地上作戦を準備=

ワールド

日曜●アングル:トランプ氏製造業政策の「光と影」、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 10
    「酷すぎる...」ショッピングモールのゴミ箱で「まさ…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中