最新記事

動物

おぞましい伝説を持つスコットランド「殺人の洞窟」で、希少種のカニを発見か

Microscopic Crab-Like Creatures Discovered in Murder Cave

2022年8月13日(土)15時25分
ジェス・トムソン
スムー洞窟

スムー洞窟 Flavio Vallenari-iStock

<かつて悪名高い追い剥ぎが「死体の捨て場所」にしていた洞窟で、イギリスでは初となる可能性がある重要な生物の発見があった>

スコットランドの2つの洞窟で、希少種と思われる小さなカニが発見された。2つの洞窟のうち1つは「殺人の洞窟」と呼ばれ、16世紀の悪名高いハイウェイマン(追い剥ぎ)による一連の殺人と関係があったものだ。

■【写真】発見された甲殻類のイラストと、発見場所となったスムー洞窟

この小さな地下水生の甲殻類は、大きさわずか1ミリほどだ。スコットランドのサザーランドにあるスムー洞窟と、アシントにあるアルト・ナン・ウアム・ストリーム洞窟の水たまりで発見された。

学術誌「ケーブ・アンド・カルスト・サイエンス」に発表された論文によれば、スコットランド各地にある32の洞窟を6年かけて予備調査した結果、このカニが発見された。ヨーロッパのほかの場所で見られる種と同じかどうかは、まだ確認する必要があるという。

通常、地下水生生物は偏性(生存できる環境条件が1つに限定されること)で、地下のみに生息している。帯水層、湧水、河床間隙(河床の下にある多孔質の堆積物で、浅い位置の地下水と地表水が混じり合う場所)などの地下水面という奇妙な場所に暮らしている。

この科学分野には未知の部分が多い。地下水に暮らす動物の基本的な生態、これらの動物が提供する生態系サービスの範囲、汚染などの人為的なかく乱が与える影響については、まだ多くが分かっていない。

追い剥ぎが死体の捨て場所にしていた洞窟

今回、希少なカニが発見された2つの洞窟は、一帯ではよく知られている場所。アルト・ナン・ウアム・ストリーム洞窟は、洞窟探検の人気スポットだ。スムー洞窟は、最長6000年に及ぶスコットランドの歴史と深く関連しており、この地に最初に定住した人々が使っていたと考えられている。

スムー洞窟はさらに、悪名高い追い剥ぎのドナルド・マクマードが、殺した人々の死体を、地面の穴から投げ捨てていた場所としてもよく知られている。

これらの洞窟で発見されたカニは、イギリス諸島で初めて目撃された種である可能性がある。論文の執筆者によれば、今回発見されたカニは、ヨーロッパの井戸、小川、泉、さらには森の水たまりで目撃されている種と同じかもしれないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マネーストックM3、6月は2カ月連続伸び拡大 景気

ビジネス

中国PPI、6月は2年ぶり大幅マイナス CPI+0

ビジネス

午前の日経平均は小反落、半導体株中心に利益確定売り

ワールド

豪中銀、米関税動向を注視 世界経済に大きな不確実性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 9
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 10
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中