最新記事

ジェンダー

全国の中高生のうち25万人が自身の性認識に悩んでいる

2022年5月25日(水)10時40分
舞田敏彦(教育社会学者)
性的アイデンティティー

中高生の4%超が性認識とのズレに戸惑っている ronniechua/iStock.

<意識・価値観の世代差が大きい日本では、学校現場での「多様な性」への理解が進みにくい>

人間は生物学的な性によって、男性と女性に分かれる。だが生物学的な性と、自身が認識している性が異なる人もいる。いわゆる性同一性障害の人だ。

性同一性障害とは「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信をもち、かつ自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」と定義される(文部科学省)。

こうした人たちへの配慮のため、最近では各種文書で性別記載欄をなくす動きが出ている。あるにしても、「分からない」や「答えたくない」といった選択肢が設けられるようになっている。これらに丸をつける人は、ネグリジブルスモール(無視できる少数)ではない。<図1>は、最近の公的調査の回答データだ。性別の設問で「どちらともいえない」「答えたくない」と回答した者,ないしは不明(空白)の者のパーセンテージを積み上げグラフにしている。

data220525-chart01.png

3つの合算は小学生では1%ほどだが、中高生になると4%を超える。思春期になって増えるのは、生物学的な性徴が明瞭になり、自身が抱いている性認識とのズレに戸惑うためだろう。生物学的な性により、部屋割りなどを決められることにも葛藤が生じてくる。

全国の中高生は640万人ほどなので、4%という比率を適用すると、性の認識に悩んでいる中高生の実数はおよそ25万人。ざっくり、1つの学校に15人ほどいる計算になる。1クラスに1人はいると見ていいかもしれない。

学校の側は、設備の利用面などでの配慮と同時に、性同一性障害について理解を深めておく必要がある。医療機関での診断がされていない場合でも、当の生徒や保護者の意向を踏まえながら支援を行うことは可能だ。ただ、当の生徒が抱く違和感は固定的なものではなく成長によって変わり得るものなので、頑なな先入観を持ってはならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも

ワールド

トランプ氏、イランに直ちに協議呼びかけ 「戦いに勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中