最新記事

地政学

かつて日本の「敗戦」を決定づけた要衝・ガダルカナルで今、中国がやっていること

A GAME-CHANGING DEAL

2022年4月27日(水)17時32分
パトリシア・オブライエン(歴史学者)

220503P52_SMS_03.jpg

ホニアラの中国大使館 AP/AFLO

こうした状況で中国との協定が明るみに出たため、ソガバレ退陣を求める声は一層高まった。これを抑え込むため政権側はこのところそれらに執拗に厳しい警告を発している。

この島国の民主主義体制が脆弱なことを考えると(しかも来年には国政選挙が控えている)、数々の問題を抱えている現状は非常に危うく、くすぶり続ける紛争の火種がいつ燃え上がってもおかしくない。

今のソロモン諸島の状況では、米中の代理戦争のような紛争が火を噴き、地域全体が火の粉をかぶるシナリオを容易に想定できる。ソガバレは認めないが、中国と協定を結べばホニアラをはじめ全土で治安が一層悪化するのは目に見えている。

第2次大戦で日米も戦ったガダルカナル島

それ以上に気掛かりなのは、この協定が地域全体、さらにはインド太平洋全域の安全保障に与える影響だ。第2次大戦中の1942年8月に始まった「ガダルカナル島の戦い」から今年で80周年だ。この激戦では日米双方の軍隊が大打撃を受けた上、ソロモン諸島の多くの住民も命を失った。

この悲劇が浮き彫りにするのはソロモン諸島の戦略的な重要性だ。それは今も変わらない。ソロモン諸島を自国の「裏庭」とみるオーストラリアにとってはなおさらだ。

ソロモン諸島はまた、近隣のパプアニューギニア、そしてすぐ北に位置し、パプアニューギニアから独立しようとしているブーゲンビル自治州、さらにはフィジーとニュージーランドにとっても戦略的に非常に重要な位置にある。

中国とソロモン諸島が安全保障協定を結ぶ動きが明るみに出た直後の3月29日、ニュージーランドはフィジーと「パートナーシップ協定」を結んだ。それに先立ち3月半ばにはオーストラリアもフィジーとの防衛協力の取り決めを大幅に更新している。

ソロモン諸島と中国の協定で最も問題になっているのは、この協定に基づいて中国がソロモン諸島に軍事施設を建設するかどうかだ。ソガバレとその周辺は、中国が南西太平洋への覇権拡大を目指して軍事基地を建設する可能性を真っ向から否定している。

ソロモン諸島の政治学者であるタルシシウス・カブタウラカは「中国がソロモン諸島に海軍基地を建設することは考えにくい」と述べ、その理由として「外国に基地を設けるのは中国のやり方ではない」ことを挙げている。約80カ国に750の軍事基地を持つアメリカと違い、中国は「ジブチに1カ所基地があるだけ」だというのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    中国がインドに仕掛ける「水戦争」とは? 中国のダ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中