最新記事

ヘルス

「ひざの痛み」という悩みがいつまでも解消されない、日本ならではの事情

2022年1月22日(土)11時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ひざの痛み

milan2099-iStock

<多くの人が「ひざの痛み」という悩みから抜け出せない原因は、日本ならではのライフスタイルや従来の治療法の問題にも関わりが>

肩こりに腰痛、背中の痛み......年をとるにつれて体のあちこちに多少の不具合がでてくるものだが、なかでも困るのは「ひざ痛」ではないだろうか。もちろん、腰や首、背中の痛みなどもつらいものだが、ひざ痛の場合、「歩く」という日常生活の基本動作に支障をきたす点が、実に深刻な問題となる。

東京・足立区で「アスリートゴリラ鍼灸接骨院」を開業している高林孝光は、毎日のように訪れるひざ痛の患者をなんとか救いたいという思いから、長年、試行錯誤を重ねてきた。

高林はこれまで、車椅子ソフトボール日本代表のチーフトレーナーを務めたほか、世界ランキングトップクラスのプロゴルファーやフェンシングの五輪日本代表選手ら著名アスリートのケアもしている治療家だが、通院者の多くは一般的な「痛み」の治療に通ってくる普通の人たちだという。

現在、医療の世界は日進月歩の進化をとげている。AIを応用した診療や、最先端テクノロジーによる手術法の開発などにより、患者にとって低侵襲(体の負担の少ない)医療が現実のものとなっているのだ。

にもかかわらず、昔からほとんど変わっていないのが「痛み」の治療である。今回、ひざ痛を解消するためのセルフケア法を公開した高林の新刊『ひざ痛がウソのように消える! 1日40秒×2 ひざのお皿エクササイズ』より、治療の現状や痛みの生じるメカニズム、セルフケアの方法について、3回にわたって紹介する。

なぜあなたのひざ痛は治らないのか

「歩くとひざがギシギシいって痛くてたまりません」
「立ち上がるときにひざに激痛が走ります」
「痛み止めを飲んでも、湿布を貼っても、ひざの痛みが取れません」
当院には、このように訴える患者さんが、それこそ毎日のように来院されます。主に40〜60代が中心で、男女の比率は4対6といったところでしょうか。

ひとことでひざ痛といっても、さまざまな病態や原因がありますが、圧倒的に多いのは変形性膝関節症です。変形性膝関節症は、ひざ関節の軟骨がすりへることによって痛みや腫れを起こす病気です。したがって、レントゲン検査でひざ関節の軟骨の変形が認められると、変形性膝関節症という診断名がつきます。国内では、60歳以上の約6割が変形性膝関節症を患い、ひざ痛の原因の約9割が変形性膝関節症といわれています。

ひざ関節の軟骨がすりへる最大の理由は加齢といわれています。人が歩くとき、体重の約5倍もの負荷がひざにかかります。その長年にわたる負荷が積み重なって、年とともに軟骨がすりへっていくのです。そのことを証明するように、高齢社会の到来とともに、変形性膝関節症の患者数は年々増加しています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中