最新記事
ヘルス

「ひざの痛み」という悩みがいつまでも解消されない、日本ならではの事情

2022年1月22日(土)11時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

『ひざ痛がウソのように消える! 1日40秒×2 ひざのお皿エクササイズ』
 著者:高林 孝光
 出版社:CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ひざが痛む本当の原因

ひざ関節の軟骨がすりへると、摩耗粉という削れた軟骨のカスが出ます。摩耗粉は、ひざ関節全体を包む関節包の内側にある滑膜に付着します。すると、滑膜の細胞から炎症性サイトカインという生理活性物質が分泌されます。炎症性サイトカインは本来、細菌やウイルスなどの異物を退治する役割を果たしているのですが、摩耗粉も異物と認識して攻撃してしまいます。そのため、滑膜に炎症が起こって痛みが生じるのです。

ひざ関節にこうした炎症が起こっている場合、特徴的な症状が現れることがあります。ひざを動かしたときに、「キュッ、キュッ」あるいは「ギュッ、ギュッ」という雪を踏んだときのような音がするのです。この音を握雪音といいます。一方、ひざを動かしたときに、「ギシギシ」という音がする場合は、関節液の不足が考えらえます。

変形性膝関節症になると、どのような経過をたどるのでしょうか。
初期の段階では、ひざにこわばりや違和感を覚えます。ときどき痛みの出ることもありますが、しばらくするとおさまることが多いため、そのままにしておく場合が多いようです。

中期になると、軟骨のすりへりが進行し、ひざ関節の変形が始まります。すると、ひざの曲げ伸ばしや、階段の上り下り、長時間の歩行をしたときに痛みが出るようになります。多くのかたは、この段階で医療機関を訪れます。

末期になると、軟骨のほとんどがすりへって、骨と骨が直接ぶつかるようになります。こうなると、強い痛みが出て、立つ・座る・歩くといった日常生活の動作が困難になります。また、ひざ関節が変形し、O脚にもなります。

ただし、その一方で、ひざ関節が変形しても痛みの出ない人もいます。
2005年に東京大学医学部の研究グループが行った疫学調査(病気や健康状態について広い地域や多数の集団を対象としてその原因や発生状態を統計学的に明らかにする調査)によると、レントゲン検査で変形性膝関節症と推定された全国の約2400万人のうち、痛みのある人は約820万人で、残りの1580万人はとくに痛みを感じることもなく生活しているという結果が出ています。

日本人は座っている時間が世界一長い?

日本整形外科学会や日本腰痛学会では、痛みの治療に強く推奨するものとして、鎮痛剤と抗炎症薬をあげています。つまり、痛み止めと湿布薬の処方です。

しかし、このような治療方針をかかげているのは、世界的に見ても日本だけです。海外では、運動療法が中心です。多少の痛みがあっても、体を積極的に動かすことで、痛みを能動的に解消しようというわけです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の

ビジネス

アマゾン、豪データセンターに5年間で130億ドル投

ワールド

イラン世界最大級ガス田で一部生産停止、イスラエル攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中