最新記事

感染症対策

オミクロン株の急拡大が示した次世代ワクチンの必要性

2021年12月10日(金)17時29分
米フィラデルフィアで新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける女性

新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株の出現は、ウイルスの急激な変異に影響を受けにくいワクチン開発が、是非とも必要だという警鐘だ――。写真は3月、フィラデルフィアでワクチン接種を受ける女性(2021年 ロイター/Hannah Beier)

新型コロナウイルスの新変異株・オミクロン株の出現は、ウイルスの急激な変異に影響を受けにくいワクチン開発が、是非とも必要だという警鐘だ――。ロイターが取材した有力なウイルス学者や免疫学者は、こう話した。

いわゆる第1世代ワクチンの大半は、新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する際に使う表面の突起(スパイクタンパク質)を標的にしている。科学者の間でオミクロン株への警戒感が強まったのは、このスパイクタンパク質での30カ所余りを含め、同株の変異個数がそれまでの変異株よりずっと多いからだ。

オミクロン株が既存ワクチンや以前の感染で獲得した免疫機能をどの程度すり抜ける力があるのか、という研究は現在進行中。新たなデータによると、ファイザー/ビオンテック製ワクチンは2回接種した段階でも、オミクロン株に対する防御がある程度弱まることが分かっている。

もっとも、今のワクチンが当面効果を維持するとしても、オミクロン株という劇的な変異によって、ウイルスの簡単に変異しない部分に作用するワクチンが求められている状況が浮き彫りになった。

米シアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究センターのウイルス学者ラリー・コリー博士は「オミクロン株から1つ明らかになった点は、新型コロナウイルスは消えてなくならないということだ。より効果の高いワクチンが必要だ」と述べた。同氏は、米政府が支援するワクチンの臨床試験を監督している。

現段階でもワクチンは、重症化や死亡を防ぐ力はほぼ保っている。世界連携でワクチン開発を促進するために発足した官民パートナーシップの感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)のリチャード・ハチェット最高経営責任者(CEO)は、緊急対応手段として今あるワクチンの存在は「際立っている」と評価する。

しかし、より長期的なリスクを制御するには、もっと多くの取り組みと資金が不可欠だ。今年3月にはCEPIが、新型コロナウイルスの変異株や中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)といった類似のウイルスに効くワクチン開発に向けて、2億ドルの拠出を呼び掛けた。ハチェット氏は「われわれは、予想不可能な将来に対するヘッジとして、投資をしなければならない」と強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウォラーFRB理事、10月会合で25bp追加利下げ

ビジネス

米消費者の支出継続、パンデミック期の勢いなし=リッ

ワールド

イスラエルとハマス、合意違反と非難応酬 ラファ検問

ビジネス

再送ネクスペリア巡る経済安保懸念が波紋、BMW「供
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中