最新記事

イギリス

中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官

MI6 Warns China 'Miscalculation,' 'Overconfidence' Could Lead to War With U.K., Allies

2021年12月1日(水)18時40分
ローラ・コルパー

非政府組織の脅威に関して、ムーアはアフガニスタンの国際的に支援された政府の崩壊と武装勢力タリバンの政権復帰は、武装勢力を「奮い立たせる」要素になったと述べた。

「私はこの件について問題をぼかして語るつもりはない。米軍がアフガニスタンを去った今、脅威は成長する可能性が高い」とムーアは語る。だが彼はタリバンの支配の驚くべきスピードを、西側の諜報活動の失敗と呼ぶのは、「大げさ」であるとも言った。

一方、敵対的な国や集団にこれまでにない能力を与えているサイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた。

ロンドンの国際戦略研究所で行われた今回の講演で、人工知能やその他の急速に発展する技術には破壊的な潜在能力があることからして、MI6は技術の進歩によって不安定化する世界で「秘密を保つためには、よりオープンになる」必要がある、とムーアは語った。

「われわれに敵対する者たちは、こうした技術を習得することで力を獲得できることを知っているため、人工知能、量子コンピューティング、合成生物学に資金と野心を集中している」と、ムーアは論じた。情報と権力を得るために膨大な規模でデータを収集している国の例として彼は中国の名をあげた。

ボンド映画とは違う

この状況に追いつくために、イギリスのスパイ組織は、「最大のミッションをも解決する世界レベルのテクノロジーを開発するために、ハイテク産業とのパートナーシップを追求していく」と、ムーアは言った。

「007」シリーズに登場する架空のMI6は自ら数々のガジェットを作り出していることに触れ、「ボンド映画のQとは違う。情報機関の中だけですべてをまかなうことはできない」とムーアは付け加えた。

民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う。イギリス政府は1992年までMI6の存在を認めなかった。最近、情報部は徐々にオープンになってきており、公認の歴史を本にして出版することも認められた。ただし、1949年までしかさかのぼることはできない。

コードネーム「C」で呼ばれる局長の名前が公表されるようになったのも1990年代のこと。ムーアはツィッターのアカウントを持っているが、これもMI6局長として初めてのことだ。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア黒海沿岸でウクライナのドローン攻撃、船舶2隻

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ビジネス

午前の日経平均は大幅続伸、5万円回復 AI株高が押

ワールド

韓国大統領府、再び青瓦台に 週内に移転完了
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中