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インタビュー:戦略投資、次期中計で倍増6000億円規模に 利益成長加速=第一生命HD社長

2025年07月01日(火)08時03分

 第一生命ホールディングスの菊田徹也社長は、現行の中期経営計画(2024-26年度)で掲げた戦略投資枠3000億円を、次期中計では、少なくともその倍となる6000億円規模への拡大も視野に入れていることを明らかにした。写真は6月25日に都内で撮影(2025年 ロイター/Miho Uranaka)

Miho Uranaka

[東京 1日 ロイター] - 第一生命ホールディングスは、英保険M&Gへの出資をはじめとする戦略投資を相次いで実行し、グループ全体の事業ポートフォリオの転換を進めている。菊田徹也社長は、現行の中期経営計画(2024-26年度)で掲げた戦略投資枠3000億円を、次期中計では、少なくともその倍となる6000億円規模への拡大も視野に入れていることを明らかにした。ロイターとのインタビューで語った。

今年5月末に公表した約1600億円のM&Gへの出資は、第一生命HDにとって生命保険分野における初の本格的な欧州での戦略投資となる。菊田氏は「北米はバリュエーション(企業価値評価)が高騰しており、先行き不透明感も強い。地域分散を図る上で、会計や規制に親和性のある英国での投資は好機だった」と説明する。

M&Gは生命保険と資産運用を手がける企業で、足元では生保からの高いキャッシュフローと利益貢献が期待できる一方、今後は資産運用(アセットマネジメント)へのシフトが進む見通しだ。菊田氏は「欧州のアセマネ分野にフットプリント(足跡)を持ちたい思いがあった」といい、運用対象を米国中心から欧州にも広げる考えだ。

現中計ではM&Gと豪チャレンジャーへの出資により、合計で2500億円を消化した。残る500億円に加え、業績の上振れ分を反映し、戦略投資枠には「1000億円程度の余力がある」との認識を示した。5月には世界最大規模の債券ヘッジファンドである英キャプラ・インベストメント・マネジメントへの追加出資も公表し、今後も海外生保およびアセマネ分野を中心に機会があれば積極的に投資を検討するという。

現中計では資本コストの改善を優先事項としており、25年3月期に初めて資本コストを上回る10.7%の修正ROE(自己資本利益率)を実現した。単年で終わらせず、これを継続的に維持・向上することで、27年度から始まる次期中計では「ざっくりイメージで、戦略投資枠は少なくとも倍ぐらいになる」との見通しも示した。

戦略投資枠も含めてまだ決定していないとした上で、次期中計の期間は4年間になる可能性があるとし、「戦略投資により重きを置き、30年度に向けて利益成長を加速させたい」とも語った。

国内市場の低成長を背景に、買収や出資を通じて海外市場の成長性を取り込もうとする動きは、生命保険業界全体に広がっている。日本生命保険は、24年末に約1兆2000億円で米系レゾリューションライフを買収すると発表し、住友生命保険と明治安田生命保険も海外で買収を実施している。

菊田氏は、日本事業の人口動態や低成長イメージが第一生命の株価評価につながっているとし「修正ROEが高い海外事業やアセマネの比率を高め、PER(株価収益率)の改善につなげたい」と語った。

一方、国内でも収益基盤の強化を図る。7月には第一生命HDと丸紅の国内不動産事業を統合し、資産運用を軸とする国内不動産バリューチェーンを構築するための新体制を発足。不動産AUM(運用資産残高)は約2兆円規模となり、「トップ5に入る水準。もっと上を狙える立ち位置になる」という。今後は買収や統合も選択肢に、スケールの獲得を競争力の向上につなげたい考えだ。

*インタビューは6月25日に実施しました。

ロイター
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