最新記事

寄生虫

突然の激しい発作に意味不明の言葉──原因は20年前に脳に侵入したサナダムシの◯◯だった

Symptoms of Tapeworm in the Brain Explained as Man Diagnosed After Seizures

2021年11月18日(木)18時00分
ロバート・リー

目に見えないほど小さなサナダムシの卵は生鮮食品や糞便に紛れているので要注意 Sinhyu-iStock

<サナダムシはかつて腸に寄生して時には何メートルにも成長することで恐れられたが、幼虫が血流に乗って脳や脊髄に達するともっと厄介なことになる>

突然激しい発作を起こし、その後に意味不明の言葉を発するなど、せん妄状態でボストンの病院に搬送された38歳の男性は、サナダムシの幼虫に脳を侵されていたことが分かった。

男性患者(身元は公表されていない)は午前4時にベッドから落ちて、けいれんを起こしている状態で発見され、マサチューセッツ総合病院に運び込まれた。この症例を報告した論文は医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンのオンライン版に11月11日に掲載された。

当初、医師らは原因不明の症状に困惑したが、前日までいたって健康だったという男性が搬送後に再びてんかん発作を起こしたことから、MRIとCTで脳を調べ、3カ所の病変を発見した。

これらの病変から、男性は神経嚢虫症と診断された。サナダムシの幼虫が血流に乗って脳内に入り、休眠状態のシスト(嚢胞)となって、悪さをしていたのだ。

嚢虫症は、豚などに寄生するサナダムシの卵が、人の体内に入り込むことで引き起こされる。なかでも脳や脊髄が侵される神経嚢虫症は非常に厄介で、治療しなければ死に至ることもあると、米疾病対策センター(CDC)は警告している。

腸内で成長するほうがまし

神経嚢虫症は、感染した領域とその領域に潜んでいたシストの数によって、多種多様な症状が出る疾患だ。

CDCによれば、最もよくある症状はてんかん発作と頭痛だが、せん妄や注意力の低下、平衡感覚の乱れなどがみられることもある。

神経嚢虫症が引き金となり、髄液が過剰に溜まり、脳室が拡大する「水頭症」を発症することもある。また、開発途上国では、大人になってから発症するてんかんのかなりの割合は、神経嚢虫症によるものと言われている。

感染源は、十分に加熱されていない豚肉やよく洗っていない生野菜など。これらの食材には、顕微鏡でなければ見えないような小さなサナダムシの卵が付着していることがある。

卵が腸内でかえり、成虫になっても大した悪さはしないが、幼虫が血流に乗って体のあちらこちらに移動し、シストを形成すると、神経嚢虫症をはじめ嚢虫症を引き起こすおそれがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米労働省、10月雇用統計発表取りやめ 11月分は1

ワールド

トランプ氏、パウエルFRB議長を改めて非難 「金利

ビジネス

米8月の貿易赤字、23.8%減の596億ドル 輸入

ワールド

独財務相「敗者になること望まず」、中国の産業補助金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中