最新記事

数学

算数嫌いな人たちに共通する「苦手な単元」にこそ、数学の神髄があった

2021年11月17日(水)18時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
算数の授業

Imgorthand-iStock

<算数・数学が嫌いな子供が生まれる最大の要因は、「抽象的な考え方」へと世界が一変してしまうタイミングでついていけなくなることにある>

いちばん好きな教科と嫌いな教科のアンケートを取ると、両方のトップになるのが「数学」だ。好きな人たちが「数学は美しい」と語る一方、嫌いな人たちは「なんのために数学を勉強するのかがわからない」と言う。

なんのために? 「現代の科学技術は物理学によってつくられ、物理学は数学に支えられているから」「数学で問題解決能力が身につくから」「数学は論理的思考力を養うから」――文部科学省の見解もだいたいこういったものだが、どうも釈然としない。「正解はなく論理通りにいかない社会の中でどう生きるのか?」を考えることが実社会での思考だからだ。

見えないときに、見る力。 視点が変わる打開の思考法』(CCCメディアハウス)の著者、谷川祐基氏は「数学を学ぶ目的は抽象性を育てることにある」という結論に行きついた。世界を「具体性」と「抽象性」の両面から見て、考える。見えにくいものをなんとかしてみようとする。その試みが数学であるのだ、と。

『見えないときに、見る力』を2回にわたって抜粋紹介する。数学的思考への見かたが変われば、思考に対する見かたが変わる。思考に対する見かたが変われば、世界の捉えかたが変わる。実感してみてほしい。

◇ ◇ ◇

「世界が急に変わったから、ついていかれへんのや」

――「速さ・時間・道のり」というトラウマ


ピタゴラス(以下「ピ」): 自分、小学生の算数も教えとるん?

環太(以下「環」): え、はい。小学生も教えてますよ。そちらは個別指導で、学校の授業の補習なんかをしています。

ピ: 数学嫌い言うて、まあ急激に数学嫌いが増えるのは中学校からだけども、小学校の算数からその気配をみせる子もたくさんおるやろ。算数が嫌いになるのは、どの単元からや?

環: そうですね......。

もちろんどの単元でもつまずく子はいますけど、分数......割合......速さ......あたりですかね。繰り上がりの足し算ができないとか、掛け算の筆算でミスが多いって子もいますけれど、このへんはいちおう、練習量を増やせばなんとか慣れるんですよ。でも、分数、割合、速さといった単元は、なかなか理解してもらえないというか、どれだけ問題数をこなしても、できない子はできないままになりやすいんです。

ピ: ま、そんなとこやろ。じゃあ聞くが、その分数、割合、速さに共通する、算数嫌いを生み出す要素とはいったいなんじゃ???

『見えないときに、見る力。
視点が変わる打開の思考法』

 谷川 祐基 (著)
 CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中