最新記事

皇室

眞子氏バッシングの日本に足らないもの

On Japan's 'Megxit,' We Need a Feminist and Human Rights Conversation

2021年11月2日(火)10時30分
嶋田文(カルチャーラボ代表・東京大学客員研究員)

「バッシング行為は自らの不安の投影」

女性をはじめとする少数派にとって最も不利な状況だ。日本は世界経済フォーラム(ダボス会議の団体)が発表するジェンダーギャップレポートの下位常連国として有名で、2021年は120位。女性は「若くてかわいい事務員」や「控えめな主婦」など、狭い範囲の役割に閉じ込められている。本来は多様なわれわれが自分らしく生きるだけで、悪質ないじめの対象になりやすい。昨年、リアリティー番組の人気者だったプロレスラーの木村花さんが、ネット上の悪意のメッセージのせいで自殺した。英ガーディアン紙は「ハナの死はネットいじめの問題と、女性に社会的慣習に従うことを迫るプレッシャーを浮き彫りにした」と報じた。

だから、小室眞子氏のストーリーにはフェミニストと人権の視点が必要だ。私たちは、日本の少女や女性、そして他のすべての人々に正しいメッセージを送らなければならない。眞子氏を幼児扱いし、支配することは許されない。彼女はプリンセスであると同時に、30歳になり、長年付き合ってきた男性と結婚し、ニューヨークに引っ越そうとする自立した女性だ。何も難しいことはない。彼女の選択を認めなくてもいい。眞子氏が何度失敗をしてもいい。小室眞子氏の結婚に抗議する人たちは彼女の自主性、さらにはすべての若い女性を軽視している。

まず自分自身を見つめ直そう。小室眞子氏と夫の圭氏へのバッシングは、変化する世の中に対する自らの不安の投影だ。圭氏の母親が元婚約者に借金をしていることが許せないと感じたのなら、自分自身と向き合おう。経済協力開発機構(OECD)によると、日本は先進国の中で最も借金の多い国だ。2021年10月時点で、国際通貨基金(IMF)は日本のGDPに対する債務比率を256.9%、債務残高は13.1兆ドルと推定している。一方で経済は数十年にわたって停滞している。圭氏のポニーテールをスキャンダル視する前に、人種的に多様な子供たちの髪を黒く染めてストレートパーマをかけ、他の子供と同じ外見にすることを義務づける校則を変える必要がある。時代の変化を避けるため、新しいものを排除し続けることはできない。それは自殺行為だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中