コラム

眞子さんと小室圭氏に対する日本人の要求は過酷すぎる。この結婚でジレンマが解決できるわけではない

2021年11月01日(月)18時35分
眞子さんと小室圭氏

結婚後の記者会見に臨み、見つめ合う2人(10月26日) NICOLAS DATICHEーPOOLーREUTERS

<眞子さんが「ポニーテールの一般人」と結婚できるなら、皇族も庶民と同じではないか。永遠であるべき日本の国が、なぜこんなにも下世話で凡庸なのか。社会的保守派の不合理な主張だが、根本的な問いでもある>

秋篠宮家の長女・眞子さんと10月26日に結婚した小室圭氏が、9月に3年間のアメリカ生活からポニーテール姿で帰国したとき、多くの日本人が眉をひそめた。将来の義父母と会う際にダークスーツではなく、ピンストライプのスーツを着ていたことにも、ある宮内庁関係者は不満を漏らした。

小室氏と眞子さんが婚約を発表して以来、日本メディアは小室氏の母親が元婚約者から約400万円を借りて返していないと熱心に報じてきた。この「スキャンダル」は小室氏が皇室をだまそうとしている証拠に違いないというわけだ。

国民は当初、小室氏の飾らない人柄に好感を抱いたが、ネガティブ報道の洪水により率直さは粗野さの表れであり、眞子さんとの婚約はペテン師の所業だと、多くの日本人が確信した。眞子さんの父・秋篠宮殿下も、この結婚に不満だったようだ。

眞子さんの結婚に対する国民の懸念の背景には、切ないラブストーリーと国民の自意識を形成する「神話」との避け難い衝突がある。

眞子さんの人生を詳しく知ることで、私たちは気付く。プリンセスといえども、完璧な女神として生きることを義務付けられた不完全な世界で、懸命に愛を見つけようとする若い女性にすぎないことを。

日本の皇室は武士による統治と権力争いが続くなか、長きにわたり日本を統合する儀礼的存在だった。

ただし、天皇の「現人神」としての地位が政治的・社会的に重要な意味を持つようになったのは、第2次大戦前から戦中にかけての軍国主義期であり、天皇の「神性」は軍国主義体制とその政策を日本という国の本質と結び付ける役割を果たした。

日本の皇室を含む君主制は、そして全ての社会的保守派も例外なく実現不可能なジレンマに直面している。眞子さんが不完全な人間界で完璧な女神として生きる義務を負わされているように。

国の本質とは、時を超えた完璧なものだとされている。そのため、眞子さんやその新郎たる小室氏が古来の慣習や考え方に背くことは、国の本質や完璧さから外れ、日本の文化・伝統を体現する存在を汚す行為と受け止められる。

小室氏のポニーテールは単なる「場違い」ではなく、日本の本質を脅かす攻撃なのだ。

眞子さんが「ポニーテールの一般人」と結婚できるなら、皇族も庶民と同じではないか。永遠であるべき日本の国が、なぜこんなにも下世話で凡庸なのか。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU産ブランデー関税、34社が回避へ 友好的協議で

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 自由取り戻すと

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story