最新記事

惑星防衛

小惑星から地球を守れ 探査機の体当たりで軌道変更、NASAが初の実験へ

2021年10月22日(金)16時30分
青葉やまと

DART探査機は11月の打ち上げ以降、ファルコン9から放出されると、宇宙空間を10ヶ月ほどフライトする。そして2022年9月下旬、地球から1100万キロのポイントまで迫ったディディモスと落ち合う。

衝突試験の2日前になると探査機は、イタリア宇宙機関(ASI)が提供するキューブサット型観測機「LICIA」を分離する。LICIAは後方からDARTを追い、衝突の様子や結果として生じたクレーターの画像などを撮影する役目を担う。

DART機本体がディモーフォスに衝突する速度は、秒速6.6キロに達する。拳銃の弾丸の20倍ほどの速さだ。衝突後は地上の望遠鏡とレーダーにより、惑星の運動特性の変化が観測される予定だ。衝突による速度の変化はわずか1%ほどだが、結果としてディモーフォスの公転周期は現在の11.92時間から10分程度短くなると見込まれている。

天体の運動を人類が変える

キネティック・インパクタによる惑星防衛は、従来の惑星探査とは違う新しい試みだ。NASAのサイエンティストであるトーマス・スタッドラー氏は、NASAによるポッドキャストのなかで、「私たちは足跡やタイヤ痕などは残してきましたが、天体の運動を人類が変えるのは初めてのことです」と述べている。

CBSニュースは1998年のSF映画になぞらえ、「NASAが『アルマゲドン』式ミッション開始へ」「次回のNASAのミッションは、SF災害映画のワンシーンにも似ているかもしれない」と報じる。ただ、今回採用するキネティック・インパクタでは小惑星を破壊せず、軌道を逸らすことを目的としている点でやや異なる。

小惑星対策をめぐっては、ジョンズホプキンス大学の研究者らが先日、状況によっては核爆弾による粉砕が有効であるとするシミュレーション結果を発表した。耳慣れない惑星防衛ということばだが、小惑星の飛来は無視できない危険として、複数の手法の研究が進められている。

DART, NASA's First Planetary Defense Test Mission


NASA Mission Will Crash Craft To Redirect Asteroid

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ビジネス

アップル、1─3月業績は予想上回る iPhoneに

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中