最新記事

惑星防衛

小惑星から地球を守れ 探査機の体当たりで軌道変更、NASAが初の実験へ

2021年10月22日(金)16時30分
青葉やまと

スペースX社のファルコン9によって11月に探査機を打ち上げる予定 NASA

<飛来する小惑星の軌道を変え、地球への衝突を防ぐ。まるでSF映画のストーリーのようだが、NASAは真剣だ>

地球の近くには、さまざまな小惑星が行き交う。地球との衝突の可能性がある天体は、わかっているだけで1400から2000個に上るとされる。太古の昔にはチクシュルーブ衝突体がメキシコ湾に衝突し、恐竜の絶滅を招いた。

現代でも仮に同様のことが起きれば、甚大な被害は避けられないだろう。こうした懸念は「惑星防衛」と呼ばれる現実的な問題として、各国の宇宙機関などが対策を検討している。

その一環としてNASAは11月、本格的な惑星防衛の試験に向け、探査機を打ち上げる。小惑星に探査機を高速で体当たりさせて軌道を逸らすキネティック・インパクタと呼ばれる手法を実施し、データを収集する。

このミッションはダブル・アステロイド・リダイレクション・テスト(DART)と命名され、宇宙空間において実際にキネティック・インパクタを適用する初のプロジェクトとなる。

dart-poster3_.jpeg

NASA

二重惑星で衝突テスト

計画では11月24日、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から、スペースX社のファルコン9によってDART探査機を打ち上げる。目標となるのは、軌道の一部が地球近傍を通過する二重小惑星「ディディモス」だ。ギリシャ語で「双子」を意味するその名の通り、引力を及ぼしあう2つの小惑星からなり、共通の重心の周りを互いに公転している。

二重惑星のうち小さい方の惑星は一般にムーンレットと呼ばれるが、ディディモスのムーンレットには「ディモーフォス」の別名が与えられている。米NBC系列のWBAL-TVによると、これは「2つの形態」を意味し、人類によって軌道を大きく変えられる初の天体となることから名付けられた。

サイズはディディモスが直径780メートルほど、ディモーフォスが直径160メートルほどだ。実際にDART探査機を衝突させる先は、ムーンレットであるディモーフォスとなる。160メートルというサイズは、実際に地球にとって脅威となりうる小惑星の典型的なサイズだとNASAは考えている。

ディディモス・ディモーフォスともに必ずしも惑星防衛上の脅威ではないが、あくまでキネティック・インパクタの効果を測定する目的で衝突実験の対象に選定された。

ターゲット捉えて自律飛行

DART探査機は1辺が約1.1メートルから1.3メートルの箱状の本体を中心に、両翼に展開する太陽光パネルや次世代型イオンエンジン「NEXT-C」などを備える。

また、DRACOと呼ばれる観測・誘導用カメラを搭載する。このDRACOおよびスタートラッカー、複数の太陽光センサーなどを組み合わせ、ディモーフォスへ向けて自律的に飛行することが可能だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ガザ「国際安定化部隊」、各国の作業なお進行中=トル

ビジネス

米ウェイモ、来年自動運転タクシーをラスベガスなど3

ビジネス

欧州の銀行、米ドル資金に対する依存度高まる=EBA

ワールド

トランプ氏、NY市長選でクオモ氏支持訴え マムダニ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中