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マクロスコープ:暫定予算不可避に、政府与党から漏れる高市氏の「恐れと誤解」

2026年03月25日(水)12時35分

2月18日、首相官邸で記者会見する高市首相。代表撮影。REUTERS

Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto

[東‌京 25日 ロイター] - 政府が来年度当初予算の年度内成立‌が困難となった場合に備え、暫定予算案を編成する方針を表明​した。自民党は衆院審議を大幅に短縮するなどして可能性を模索してきたが、与党が過半数を割る参院では高市⁠早苗首相(自民総裁)の思惑通りと​はならない見込みだ。そもそも高市氏は、なぜここまで年度内成立にこだわったのか。複数の政府与党関係者は「恐れと誤解」を指摘する。

<「暫定予算、避けられない」>

「高市氏は納得していない。まだ『強行採決すればいいじゃないか』という勢いだ」。予算審議の内情を知る政府関係者は25日、ロイターの⁠取材にこう述べた。一方で、「年度内成立を実現する方策はほぼ尽きている。高市氏の意向に関係なく、暫定予算の編成は避けられない」とも語った。

片山さつき財務相⁠は24日、年​度内成立を目指す姿勢を維持しつつ、「不測の事態」に備えて暫定予算の編成作業を進める考えを表明した。与党内には3月28、29日の週末を使って審議時間を積み上げる案や、国民民主党の賛成を得て参院でも多数派を形成する案があった。ただ、いずれも実現の目途は立たず、年度末まで1週間を切る中で政府が追い込まれた格好だ。

<「信頼関係積み上げた歴史」>

例年であれば1月下旬には始まる予算審議がここまで遅れたのは、高市氏が2月8日投開票⁠の衆院選に踏み切ったからだ。与野党、政府内には当初から「暫定予算‌が当然必要になる」との見方が広がっていた。それでも高市氏が年度内成立にこだわった理由につ⁠いて、前⁠出の関係者は「とにかく自分が選挙をしたせいで暫定予算を組むということが許せない。ただそれだけのように映る」と説明した。予算編成が遅れることで世論の批判を招くことへの恐れが根底にある、との見方だ。

また与党内には、高市氏がそもそも参院の状況を正しく認識していなかったのでは、との声もある。参院は自‌民と日本維新の会を合わせても過半数を割る。野党が結束して常任委員長の解任決議​などを可‌決することも可能だ。与野党の⁠応酬が続けば参院の審議全体が大混乱に​陥る。「熟議の府」として与野党が時に足並みをそろえながら審議を尽くしてきた参院にとっては考えにくい状況だ。ある参院自民幹部は「参院では与野党が信頼関係を積み上げてきた歴史がある。高市氏は参院でも衆院のように強行できると誤解しているのではないか」と述べた。

<「衆院審議、急いで良いことなかった」>

暫定予算編成となった場合、国民‌生活に影響はあるのか。直近の例となる2015年度の暫定予算は、11日間分として約5兆7000億円を計上。地方交付税交付金や基礎年金の支払いなどに充てる社会保障関係費などを盛り込んだ。

農林中​金総合研究所・理事研究員の南武志氏は、来年度⁠当初予算が4月11日には自然成立する点を念頭に、「せいぜい10日程度の成立の遅れなら影響はなく、暫定予算編成によるマイナスはない」と語る。

その上で、一連の経緯について「少数与党の参院で審議時間が足りな​くなることは最初からわかっていたはずだ。高市氏は衆院選の大勝を受けて慢心があったのではないか」と指摘。「結局暫定予算を編成するなら衆院でもしっかりと審議時間を取ればよかった。衆院での審議を急いで良いことは何もなかったのではないか」との見方を示した。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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