最新記事

中国

中国恒大・債務危機の着地点──背景には優良小学入学にさえ不動産証明要求などの社会問題

2021年9月22日(水)23時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

特に恒大は、この3つのすべてに違反している。

きっと震え上がったにちがいない。

もし習近平が恒大を救済などしたら、単に指針に反するだけではなく、

不動産価格の高騰を加速させバブルがますます膨れ上がっていく。

したがって習近平としては「救済しない」ということができる。

恒大を倒産させるのか?

ならば、恒大が倒産するのを黙って見ているのかと言ったら、答えは「否」だろう。

上述の社会動乱を抑えなければならないので「いきなりは倒産させない」と見るべきだ。この「いきなり」か否か、が重要だ。

「救済はしないが、倒産はさせない」というのは、矛盾しているように見えるが、中国が「特色ある社会主義国家」であることを考えると、そうでもない。

恒大の最も大きな資産は土地備蓄だ。中国では土地は国家のものなので、ディベロッパーは地方人民政府が保有している土地の「使用権」を購入して、そこにマンションなどを建てている。もし倒産してしまったら、清算するときにこれらの土地備蓄が大量に市場に出回るので土地の価値が下がり、地方政府は大きな損失を被る。そのようなことを中央政府が認めるはずがない。だから「倒産はさせない」。

また倒産してしまったら、高い頭金を支払い、ローンを組み、すでに利子も含めて大きな支出を負ってきたマンション購入者が必ず動乱を起こす。

習近平は不動産バブルを防ぐために「不動産を購入できないようにする目的」で、不動産購入時の金利を「6%~6.5%」と非常に高く設定し、頭金も不動産価格の「30~50%」を支払うことと設定している。そこまでしてでも不動産を購入させまいとしてきたために、購入者はすさまじい負担を強いられているのだ。

もし倒産したら、「家」として手に入れることができなくなるので、中間層の怒りは爆発するだろう。だから「倒産はさせない」ということが言える。

どのようにして「倒産させないように」するのか?

では、どのようにして倒産しないようにすることができるのか。

その方法はいくつかある。

まず、国有の不動産企業に深圳や上海など第一線都市の資産価値の高い土地使用権を購入させる。恒大はこの資金を債務返済の一部に充てる。

やや「長期」にわたってこれらを繰り返せば、恒大の資産も減っていくだろうが負債も減っていくはずだ。

こうして「かなり長い期間」をかけて恒大の負債を減らさせていき、しかし資産も減らしながらも建物だけは完成させて、購入者の手に渡るようにする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中