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中国恒大・債務危機の着地点──背景には優良小学入学にさえ不動産証明要求などの社会問題

2021年9月22日(水)23時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

このようにして、「恒大を救済せずに、倒産させず、購入者が動乱を起こさない」方向に「長~い」時間をかけて持って行く。

これが、習近平が描いている着地点であろうと推測される。

なお、「共同富裕」との関係においては別途論じるかもしれないが、基本は『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』に書いた精神に基づいて習近平は動いている。この背骨を理解しさえすれば、かなり正確に習近平の政策を分析することができるようになると信じている。

追記:「長~い時間」を掛けるのは恒大問題がフェイドアウトしていくまでの時間であって、購入者が「完成した家」を手にするまでの時間を指しているわけではない。もともと、たとえば2021年5月に購入した人がいるとすると、その人に「完成した家」を引き渡すのは2024年5月頃となっていた。最初から3年ほど待たなければならない契約になっている。この3年間が、たとえば半年間ほど延びて3年半になろうと、それはそれほど大きな問題ではなく、「完成した家」が入手できなくなることの方が遥かに大きな問題なので、倒産さえしなければ、購入者は動乱を起こすほど激怒することはないと推測される。

 延期された分に対する謝罪の意味での補填は、恒大集団のCEO許家印が個人の資産から払うべきだろう。彼は3兆円ほどの個人財産を持っているので、無一文になるまで支払えばいいと思う。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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