最新記事

中国

中国恒大・債務危機の着地点──背景には優良小学入学にさえ不動産証明要求などの社会問題

2021年9月22日(水)23時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

習近平は2017年、2018年と立て続けに「家は住むためのものだ。投機のための不動産購入をやってはならない」という通知を出し続けているが、しかし富裕層は相も変わらず投資のための購入をしている。

投資は必ずリスクを伴うものなので、たとえ恒大集団が倒産して大損をしたところで、富裕層自身が損をするだけで習近平にとっては大きな問題ではない。そもそも富裕層は「自分が儲けそこなった」として動乱を起こしたりはしない。彼らは「叩けばホコリの出る身」。騒がずに他の投資対象を探せば済む話だ。

習近平が動くとすれば、人数的には最も多いであろう中間層の購入者への配慮からだろう。

習近平は恒大を救済するだろうか?

すでに多くのニュースで語られているので繰り返したくはないが、基本情報だけ書くと、中国不動産大手の中国恒大集団の負債総額は今年6月末時点で、日本円で約33兆円相当に上る。その負債を巡り、資金繰りへの懸念が高まり、倒産するのではないかという不安が全世界を覆っている。

そこで注視されているのが「習近平は果たして恒大を救済するか否か」という一点だ。

この点に関して言うならば「救済しない」と言っていいだろう。

なぜなら昨年8月20日、中央行政省庁の一つである「住宅城郷建設部」や中国人民銀行などの関係部局が、恒大を含む大手不動産企業12社ほどを呼びつけて、彼らを前にした座談会を開いた。そのときにディベロッパーたちに「お灸をすえるように」以下の「三道紅線(3本のレッドライン)」を提示している。

1.不動産企業の前受け金を除いた後の総資産に対する負債比率は70%を超えてはならない。

2.不動産企業の自己資本に対する純負債率は100%を超えてはならない。

3.不動産企業の現金対短期負債比は「1」未満でなければならない(=短期負債より多い現金を持っていなければならない)。

この「3本のレッドライン」を守れない不動産企業は、「その違反の度合いに応じて銀行からの融資規模などを制限するので、そう心得よ」と厳しく言い渡した。

なぜ「三道紅線」指針を出したかというと、上述のような原因で不動産価格の高騰を招き、それによってディベロッパーも不動産価格高騰に期待して過剰融資し自転車操業をするものだから、不動産バブルがどんどん膨れ上がってしまい、いずれバブルが崩壊するかもしれないという危機感を政府が抱いたからだ。

これはまだ正式な政府通達という形で発布はされていないが、しかし今後の中国政府すなわち習近平政権の指針を示すものとして強いインパクトを与えたと思われる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アンソロピック技術の使用停止指示 「サ

ワールド

アングル:5年目迎えたウクライナ戦争、戦車が消えド

ビジネス

パラマウント、WBD買収へ 第3四半期完了の見通し

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ521ドル安 イラン緊迫や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍事工場を攻撃...「着弾の瞬間」を捉えた衝撃映像を公開
  • 4
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 5
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 6
    「努力が未来を重くするなら、壊せばいい」──YOSHIKI…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中