最新記事

パンデミック

コロナ脱出『特別便』めぐり混乱 インドネシア在留邦人「私は乗れるか?」「料金は」

2021年7月15日(木)19時50分
大塚智彦
夜を徹して新型コロナウイルスで亡くなった人の埋葬作業が行われるインドネシア

連日のように過去最多の感染者・死者を記録するインドネシアでは、埋葬作業が夜を徹して行われている。REUTERS/Ajeng Dinar Ulfiana

<1日あたりのコロナ感染者が5万人を超えるなど、東南アジアで最悪の感染状況となっているインドネシア。約2万人いるという日本人の安全は?>

コロナ感染が拡大し、連日感染者や死者が記録的に増加し続けているインドネシア。現地に滞在している在留日本人の間では「一時帰国」に関する情報が錯綜、混乱したことによる不安が急速に拡大している。

インドネシアではジョコ・ウィドド政権による後手後手の感染防止対策やデルタ株の猛威に有効な対応策が不十分なこと、さらに医療現場の疲弊、病床不足、医療関係者のコロナ感染や死亡などにより、医療崩壊の瀬戸際に立っており、「危機的な状況」が続いている。

さらに主流となっている中国シノバック製ワクチンへの不信感から「現地でのワクチン接種に否定的」な在留日本人が多いことも不安を増加させている。

インドネシアでは7月15日に一日あたりの感染者数が5万6757人と過去最高を記録。死者も982人となり、累計の感染者は270万人を突破。死者も7万人を超える最悪の状況が続いている。

日本人300人感染、14人死亡

日本大使館によると在留日本人の300人以上が感染し、死者は14人。また感染して入院待ちの人が約50人もいるという。

ジャカルタ在住の日本人の間では「一日も早く日本に帰国してワクチン接種を受けたい」との声が高まっている。

しかし日本政府が一日の入国者数を2000人に制限、航空各社ごとに1週間当たり3400人を上限にしていることもあり、日本に向かう民間航空機は搭乗券の予約が困難な状況にあるという。

民間企業社員限定の"特別便"に失望も

こうしたなか、7月14日にジャカルタから成田空港に全日空の"特別便"が運航し、在留日本人家族52人が帰国を果たした。

ところがこの"特別便"は日本政府が用意したものでも、一般の在留日本人を対象にしたものでもなく、大手ゼネコン「清水建設」が独自に手配した、同社社員とその家族用にチャーターした"特別便"だった。

一方で、茂木外相や加藤官房長官のこの"特別便"に関する会見や日本メディアの報道に接した在留日本人の間からは「どうすれば搭乗できるのか」「料金はどれくらいか」「乗客数に制限はあるのか」「日本に入国後はどういう扱いになるのか」と「政府による特別便」と理解した結果の期待と不安が沸き起こり、現地ジャカルタの日本大使館にも問い合わせが相次いだという。

だが、時間が経過するに従い、当該便が民間企業の社員、家族専用の"特別便"であることが判明し、帰国を希望する一般の在留日本人の間には「落胆」「失望」が広がった。

関係者によると清水建設は社員とその家族を帰国させるために約1カ月前から全日空と交渉を開始、最終的に外務省などと方策を詰めたという。

この"特別便"で帰国した清水建設の関係者とその家族は日本に入国後、希望者には同社が用意した職域接種でワクチン接種を実施するとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国は最大雇用に近い、経済と労働市場底堅い=クーグ

ビジネス

米関税がインフレと景気減速招く可能性、難しい決断=

ビジネス

中国製品への80%関税は「正しい」、市場開放すべき

ワールド

ロシアで対独戦勝記念式典、プーチン氏は連合国の貢献
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中