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やりすぎてしまった? 残酷すぎるコロナCM動画に賛否 豪

2021年7月21日(水)18時10分
青葉やまと

あまりに残酷、と問題になったCM...... Australian Government Department of Health-YouTube

<息も絶えだえの重症患者を描いた政府CMが、「無神経」「軍国主義的」との批判を呼んでいる>

薄暗い病床にコロナ重症患者と見られる若い女性が横たわり、少しでも酸素を取り込もうと、悲痛な声を上げながら必死で呼吸を繰り返す。このような生々しいCMをオーストラリア政府が製作し、物議を醸している。

CMはオーストラリアでの感染拡大を受けて放送されているもので、ステイホームとワクチンの接種を呼びかける内容だ。動画終盤では「誰もがコロナにかかり得ます」と告げ、「ステイホームを。検査を。ワクチンの予約を」と促す。出演者の女性は実際の患者ではなく役者だが、あまりに残酷な描写に嫌悪感を覚える人々が続出した。

恐怖をあおることで行動を促すそのスタイルは、あまりに軍国主義的だとして批判を集めている。豪スカイ・ニュースは、「これまでにないレベルのガスライティング(心理的虐待の一種)だ」と不快感を訴える声を取り上げている。また、「シドニーでは今日、CMの出演者と同年代のコロナ患者の少女が、人工呼吸器をつけて生き残ろうと闘っている」との声が上がるなど、倫理上の問題が指摘されている。

問題のCMはこちらだが、息苦しさを覚える映像になっているため、視聴にはご注意を。

COVID-19 Health Campaign - Don't be complacent:Australian Government Department of Health


若者への責任転嫁だとする怒りも

CMが放送されるや否や、政府の責任転嫁だとする怒りが拡散した。ワクチンを確保できない政府の無策を棚に上げ、まるで若者が接種を怠っているかのように問題をすり替えている、との批判がSNS上で渦巻いている。

オーストラリアは特定の職種と高齢者などを対象にした優先接種を行なっているが、供給量が十分でないことから、40歳未満の人々はすぐにワクチンを打つことができない。出演者の少女を見て最も危機感を覚えるであろう若者たちは恐怖心をあおられるだけであり、なんら具体的な行動を取ることができない状態だ。

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