最新記事

宇宙

有人宇宙船の打ち上げで中国は宇宙「領有」の野望へ一歩

China Space Station First Step in Country's Plans to Colonize Space

2021年6月18日(金)18時24分
ジョン・フェン

中国の宇宙移住計画は、まずは火星よりもう少し「近場」から始めるしかないだろう。17日の「神舟12号」の打ち上げは、5年ぶりの有人ミッションだった。

全てが計画どおりに進めば、聶海勝飛行士(56)、劉伯明飛行士(54)、湯洪波飛行士(45)の3人は中国にとってこれまでで最も長期にわたる3カ月のミッションを実行し、2度の船外活動を行うことになる。

3人の宇宙飛行士は、4月29日に打ち上げられた中国独自の宇宙ステーションの中核モジュール「天和」の初めての居住者となり、居住空間や生命維持システムなどの試験を行う。来年末に完成すれば、宇宙ステーション「天宮」は、国際宇宙ステーション(ISS)が運用を終了(早ければ2024年の見通し)した後も残ることになる。

天宮の建設に向けて予定されている打ち上げは、全部で11回――有人ミッションが4回、無人補給船が4回、モジュールの打ち上げが3回だ。これらの打ち上げを終える2022年後半以降に、中国は宇宙空間での恒久的なプレゼンスを維持できるようになる。

無人補給船の「天舟3号」は9月に打ち上げが予定されており、その翌月には「神舟13号」の有人ミッションが予定されている。さらに2022年には実験モジュール「問天」と「夢天」が打ち上げられ、T字型の宇宙ステーションを完成させる予定だ。

宇宙開発は領有権争い

ISSが運用を終了すれば、長期にわたって宇宙空間に残る実験施設は「天宮」のみになる。中国は深宇宙の研究を支援するために、2024年には宇宙望遠鏡モジュールの「巡天」を打ち上げる計画だ。

だがその前にNASA、ESAとカナダ宇宙庁が2021年11月にジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡を軌道上に打ち上げる予定だ。同望遠鏡は、31年前に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡の後継機となる。

天宮の完成は、中国の壮大な宇宙開発の野望における、きわめて重要な成果となる。アメリカの政治的反対により、中国の宇宙飛行士たちはこれまで一度も、ISSへの参加を認められていない。

いつか技術面の優位性を利用して、宇宙を単独で支配するという中国の目標について、一部の有識者たちは警鐘を鳴らしている。中国の野心的な宇宙開発計画には透明性が欠けるという指摘や、宇宙開発が2049年までに軍の近代化を目指す取り組みと関連している可能性が高いという懸念の声もある。

アナリストたちが中国の宇宙開発の隠された動機について説明する際に、よく引き合いに出されるのが、月探査計画の設計責任者である葉培建の存在だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部閉鎖始まる、党派対立でつなぎ予算不

ビジネス

日産が「エクステラ」復活と売れ筋2車種の強化検討、

ワールド

G7財務相、ロシアへの圧力強める姿勢を共有=加藤財

ビジネス

米ADP民間雇用、9月ー3.2万人で予想に反し減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 5
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中