最新記事

移民

移民の流入を減らしたいなら、カギは農業の支援にあり

STEMMING MIGRATION BY FARMER AID

2021年6月3日(木)20時20分
メーガン・ロス
アメリカに入国したホンジュラス難民の親子

ホンジュラスを出発しメキシコ国境から米テキサス州に入った6歳の少女とその母親 ADREES LATIFーREUTERS

<農村部の家族が自立して生活できれば移住は必要ない。究極の移民対策は壁ではなく地域経済の支援だ>

中米の「北部三角地帯」と呼ばれるグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルからアメリカを目指す人々が近年、増加している。米議会調査局によるとこれらの国からの移民について、2021年に入ってから現在までに税関・国境取締局(CBP)の捜査官が取り締まった人数は、既に昨年1年間を上回っている。

彼らの多くは、祖国を離れたいわけではない。ほかに選択がないのだ。国を出るか、さもなくば死を待つしかない。

しかし一方で、人々が地元に残って生き延びられるように、多くの組織が支援活動を行っている。その主要な戦略の1つが、農業支援プログラムのファーマー・フィールド・スクール(FFS)だ。

グアテマラでFFSを推進しているワールド・ネイバーズは、現在13カ国で活動している非営利団体で、1951年の設立以来、45カ国で地方の農家を中心に支援してきた。ケイト・シェクター会長兼CEOによると、FFSは農村部の家族が地元にとどまる理由と能力を与えている。

「土地を去る理由よりとどまりたい理由のほうがたくさんある。地域社会や自分の事業への投資は、人々が地元に残る重要な鍵になる」

ワールド・ネイバーズが支援するFFSは、隣人の助け合いを重視する。新しい作物の栽培方法や鶏の世話、家庭菜園の作り方などを周囲に教えようという意欲的な農家を、それぞれの地元で見つけるのだ。

例えば、主にコーヒー豆の生産に依存しているグアテマラの農家に、栽培する作物を多様化し、降雨を最大限に活用する灌漑システムを築く方法を教える。それは特に乾期や雨期に栽培を成功させることにつながるだろうと、シェクターは言う。

「FFSは基本的に実験農場だ。多くの新しい技術を学んだ経験豊かな農家がほかの農家に、収穫量を増やして灌漑用の水を確保し、作物を多様化して1つに依存しなくて済む方法などを教えている」

実際の訓練や新しい作物の栽培には時間が必要で、数年がかりのプロセスになると、シェクターは言う。また、工芸品作りや家庭菜園など、ワールド・ネイバーズがFFSと併せて奨励している取り組みも、自分たちで食べる分を育てながら、工芸品や余った食べ物を売って副収入を得ることにつながる。

「小さな家庭菜園だったものが、売り上げが伸びて家族の収入の重要な要素になっている」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中