最新記事

新型コロナウイルス

ワクチンvs変異株、パンデミックが想定以上に長引く可能性

BEWARE A WINTER SURGE

2021年5月29日(土)08時15分
フレッド・グタール(本誌記者)

ワクチン耐性を持つ変異株

昨年11月には公衆衛生当局も一般の人も変異株に注目するようになった。「見れば見るほど、判明すればするほど、意味合いがよく分かる」とワイルコーネル大学のムーアは言う。

変異株ダグの特定から1年が過ぎた今、より多くの人がワクチン接種または感染経験を経て、この変異株に対応できるようになってきた。

同じことが英国型と呼ばれる変異株B117についても言える。英国型は最近、米ミシガン州に感染拡大をもたらし、アメリカ以外でも主流になった。インドでの大流行にも大きく関わっている。

人々の免疫による抵抗力が高まればウイルス変異の道は阻まれる。とはいえ、また新たな変異株がそれを乗り越える可能性もある。

ワクチン接種済みの人にまで感染するような変異株は、変異株間の競争で進化上の強みを持つことになる。

南アフリカ型のB1351変異とブラジル型のP1変異は、現在あるワクチンによる免疫では完全には感染を防げない。例えばアストラゼネカ製のワクチンはB1351変異に効かないという。それ以外のワクチンに勝つ変異株が登場してくるのも時間の問題とみていい。

ワクチン耐性を持つ変異株は既にアメリカにも入り込んでいる。カリフォルニア州とオレゴン州でブラジル型、南東部では南アフリカ型が見つかった。

ワクチン接種を受ける人がもっと増えて英国型に対する免疫を持てば、ワクチン耐性を持つ変異株が進化上で有利な立場となり、やがて支配的になるかもしれない。加えて、さらに新たな変異株も出現し続けるだろう。

「人間はウイルスの進化の先回りをするほど賢くなければならない」とコーバーは言う。

「現時点で、このウイルスは免疫による防御を擦り抜けるような変異を始めているが、今あるワクチンは依然として有効だ。新たな変異には実験室で対応するしかない。変異の特徴を理解する必要がある。今後1~2年は、変異株に対応できるワクチンを試し続ける必要があり、こちらも対応を進化させなければいけない」

将来的に最悪の変異が起き、地球人の誰一人として抗体を持っていなかった2020年1月の状況に逆戻りする可能性は低い。コーバーらは警戒しているが、あくまでも最悪の事態に備えてのことだ。

より可能性が高いのは、変異株の続出でパンデミックが想定以上に長引くことだ。

南米チリでしばらく前に起きた事態を見ればいい。あの国では既に人口の40%以上がワクチンを接種していたのに感染者が急増し、過去の最多記録を更新した。

その一因として、まだ接種を受けていない人々が油断して、マスクなどの予防措置を怠ったことが指摘されている。だが変異株P1(ある程度までワクチンの効果を消す能力を持つとされる)の広がりが要因とも考えられる。

チリの経験は警鐘だ。ワクチン接種率が十分に高くない国は、変異株の潜在的脅威に対して安全とは言えない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、米朝関係は米国の態度次第 韓国と

ワールド

米、ベネズエラ原油のキューバ転売認可へ 国務長官は

ワールド

米政権、テック大手とホワイトハウスで来週会合 電気

ビジネス

FRB巡る政治的争い、国民の信頼を損ねる=アトラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違憲とした「単純な理由」
  • 3
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された「恐怖の瞬間」映像が話題に
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 6
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 9
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中