最新記事

アフガニスタン

米軍に協力したアフガニスタン人、アメリカに見捨てられタリバンに殺される危機が迫る

A Moral Obligation

2021年5月27日(木)21時17分
ロビー・グレイマー、ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

「アメリカを攻撃した勢力と命を賭して戦った人々を、われわれは支援する準備をしなければならない。彼らはまさに、アメリカに来て市民権を得ようとする個人に求めるべき資質を備えている」

しかし、ビザ取得までには官僚主義の壁がいくつも立ちはだかる。膨大な数の申請書類をそろえ、米領事館で面接を受け、さらに書類作成、手続きなど14段階の複雑なプロセスを経て、ようやくSIVを手にできる。

1月に国務省が発表したデータからも、膨大な時間がかかることが見て取れる。書類審査は1つにつき平均10日、事務処理には3カ月以上かかることも。さらに、特別委員会が申請を審査して承認を決定するプロセスは平均833日と、2年を優に超える。

陸軍時代にイラクとアフガニスタンの双方に駐留したミーアバルディスは、自分のアフガニスタン人通訳のSIV申請を手助けしたが、ビザの発給までに3年かかった。多くの退役軍人が似たような経験をしていると、彼は語る。

「彼らはそれぞれ、個人として正しいことをしようと努め、自分のパートナーの脱出を助けるために何年もかけて官僚機構と戦ってきた」

国としてのモラルの問題

米国務省のデータによると、昨年10〜12月にアフガニスタン向けに発給されたSIVは計1321件。アフガニスタン人の申請枠は残り1万993件だ。

アメリカは19年度末までに、米政府のために働いたイラク人に2万993件のSIVを発給したが、やはり処理の遅さや言語の壁などについて批判を受けている。今も多くのイラク人が、アメリカへの入国の承認を待ちながら危険にさらされている。

長く待たされる理由は、典型的なお役所仕事に加えて、過去の申請の処理が滞っていること、厳格な身元調査に時間がかかること、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で米大使館員が退避したために事務スタッフが少ないことなどがある。

アフガニスタン人通訳の中には、雇用契約書や、かなり前に死亡した上司や倒産した契約会社からの推薦状など、必要な書類の作成に苦労する人もいる。また、米議会内外の支援者はバイデン政権に対し、移民の再定住先として、米国内の候補地を明確に承認することを求めている。

ベラ下院議員は、アメリカという国の基本原則が問われており、党派を超えた最優先課題だと語る。

「ほかの国の人々に私たちのために働いてほしい、協力してほしいと求めるなら、今後どのようなモラルを持つべきか。国としてモラルの範を示したいのなら、これこそ私たちがやるべきことだ」

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中