最新記事

アフガニスタン

米軍に協力したアフガニスタン人、アメリカに見捨てられタリバンに殺される危機が迫る

A Moral Obligation

2021年5月27日(木)21時17分
ロビー・グレイマー、ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)

先日ジーン・シャヒーン上院議員(民主党)とジョニ・アーンスト上院議員(共和党)の呼び掛けで、20人の上院議員がバイデンに書簡を送り、今年10月に始まる新年度にはさらに2万人のアフガニスタン人にSIVを発給するよう訴えた。

この問題に対処するため、カブールの米大使館に関して「領事部の一時的な増員」を承認したと、国務省の報道官は語る。「米軍は9月までに撤退するが、アメリカは米大使館を通じて強固な外交的プレゼンスを維持し、カブールとワシントンの領事部はカブールの治安状況が許す範囲で、SIVの申請を可能な限り迅速に処理していく」

タリバンの標的になる

これまでにイラクとアフガニスタンから約3万の家族が、SIVを通じてアメリカに移住している。一方で、米軍や多国籍軍を支援したアフガニスタン人の通訳などが、ビザの発給を待つ間にタリバンなどの武装勢力に殺害されており、アメリカのモラルの甚大な欠如だと、米退役軍人の支援団体は指摘している。

SIVの申請者を支援する非営利団体「ノー・ワン・レフト・ビハインド」は、少なくとも300人の通訳やその家族の殺害を確認していると、ジェームズ・ミーアバルディス理事長は言う。

国防総省報道官のロブ・ロードウィック少将は、「自分や家族を大きな危険にさらしながら、われわれの軍に貴重な責務を提供してくれた人々を助けるために」、同省もSIVプログラムを引き続き「支持する」と語っている。

米軍の撤退が加速するなか、ビザ問題の緊急性はさらに高まっている。多国籍軍に参加している国々は、早ければ7月4日の撤退完了を目指すところもある。米中央軍は5月中旬に、撤退開始から1カ月足らずでプロセスの13〜20%が完了したと報告した。戦闘司令部によると、アメリカは5つの施設をアフガニスタン国防省に引き渡し、資材を115機分空輸した。

9月の撤退完了目標がビザ問題をより難しくしているからといって、「共に戦った人々や、撤退後にタリバンの復讐の標的になるだろう人々に対する責任をアメリカが免れることはない」と、元米国防総省副次官補でABCニュースのアナリストとしてアフガニスタンに駐在していたミック・マルロイは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

セガサミー、米フォートレスに「シーガイア」売却

ビジネス

アップル、「iPad Pro」宣伝映像巡り謝罪 ネ

ワールド

クシュナー氏、トランプ氏支援者に電話攻勢 献金呼び

ビジネス

インド株式ミューチュアルファンド、4月の資金流入は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中