最新記事

中東情勢

ガザのメディアタワーを破壊した武器はアメリカ製、バイデンも売却承認

Biden's $735 Million Arms Sale to Israel to Include Missile Type That Hit Gaza Tower

2021年5月18日(火)17時53分
トム・オコナー

イスラエル軍が使ったのと同じJDAM装備のGBU-32弾をテスト投下する米戦闘機(2012年、メリーランド州) Andy Wolfe/Lockheed Martin-REUTERS

<バイデンが先月承認したイスラエルへの武器売却計画のなかには、ガザ地区で200人以上を殺したのと同じ武器が含まれている>

ジョー・バイデン米大統領は4月、イスラエルに対して7億3500万ドル相当の武器を売却することを承認したが、この中に、イスラエル国防軍が5月15日にガザ地区の数百の地点を爆撃する際に用いたものと同じ種類の精密誘導爆弾が含まれることがわかった。これらの標的には、世界各国の報道機関が多く入居していた高層ビルも含まれていた。

米議会の各委員会の委員長は、5月5日の時点で、この武器売却について通知を受けていた。この件については17日にワシントン・ポストがいち早く報じ、本誌も議会職員2人からこの事実を確認した。この通知が行われたのは、イスラエルとパレスチナの緊張が激化する中、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義勢力ハマスが率いるパレスチナ側の武装集団がロケット弾で、イスラエル軍が空爆と砲兵射撃で、互いに攻撃を行い死者を出す惨事が起きるほんの数日前のことだった。

提案されたアメリカの武器売却パッケージには、統合直接攻撃弾(JDAM)も含まれている。JDAMは、通常のミサイルをいわゆる「スマート爆弾(精密誘導爆弾)」へと転換させ、正確性と破壊の効果を増す装備だ。この武器売却については15日間の精査期間が設けられているが、数十年にわたるイスラエルとパレスチナの紛争が急速にエスカレートする中で、今回この期間は5月20日に終了する予定だ。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は17日、この武器売却計画について記者団から質問が出ると、国務省の発表に沿うかたちで対応し、同省は「将来的な売却計画や武器売却に関しては」いかなる発表も行っていないはずだと述べた。ただし同報道官は、同盟関係にあるアメリカとイスラエルが長年にわたって築いてきた強固な関係について言及し、「我々はイスラエルとの間に、進行中かつ持続的な戦略的安全保障関係およびパートナーシップがある」と述べた。

イスラエルとパレスチナ武装組織の暴力の応酬は激化している。両者の紛争は、すでにここ数年で最悪の状況に陥っており、国際社会の懸念を招いている。なかでも特に世界の関心を集めているのが、流血の事態は回避されたと報じられている、ある攻撃だ。

支局を破壊されたアルジャジーラが武器を特定

イスラエル軍は15日、ガザ地区にあるメディアタワーに対して空爆を行った。ここには、AP通信やアルジャジーラをはじめとする、世界有数の報道機関の支局が入居していた。これらの報道機関の職員は、空爆の直前にイスラエル当局から発された、まもなく同ビルを攻撃するとの警告を受けて、建物内から慌ただしく避難した。

イスラエル軍は、建物内に「ハマスの情報部門に属する軍事資産が収容されていた」ことを理由に挙げて、この空爆は正当なものだったと主張している。ビルが倒壊するまでの衝撃的な一部始終は、写真と動画に収められた。この空爆の映像から、使われた武器も特定されておいる。バイデンが提案しているイスラエルへの売却武器リストに含まれているJDAMとまったく同じシリーズに属するものだ。

アルジャジーラは独自調査で、自らの支局を破壊した武器を「GBU-31」と特定した。これは過去数年にわたってアメリカからイスラエルに輸出されたことが判明している、JDAMシリーズに属する武器の1つだ。

今回の紛争による死者は200人を優に超える。パレスチナ自治政府の保健庁は、パレスチナ側の死者を212人と発表している。その大半はイスラエルによる空爆で死亡した者だが、ほかにも、ヨルダン川西岸地区でイスラエル警察に殺された者20人強が含まれている。一方イスラエル軍は、パレスチナ側が発射したロケット弾によりイスラエル人10人が死亡したと述べている。

(翻訳:ガリレオ)

 2022080916issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2022年8月9日/16日号(8月2日発売)は「世界が称賛する日本の暮らし」特集。日本人が気付かない日本の魅力を16人に聞いた。パックン/アルトゥル/カン・ハンナ/レニック/本音座談会…


今、あなたにオススメ

ニュース速報

ワールド

ウクライナ東部親ロ派政権、外国人5人を起訴 傭兵と

ビジネス

米ウォルマート、パラマウントとストリーミング契約で

ワールド

米、EUに内密かつ直接回答へ イラン核合意「最終文

ワールド

英ヒースロー空港、旅客制限10月まで延長

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:世界が称賛する日本の暮らし

2022年8月 9日/2022年8月16日号(8/ 2発売)

治安、医療、食文化、教育、住環境......。日本人が気付かない日本の魅力

※次号は8/17(水)発売となります。

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    オタクにとって日本ほど居心地の良い国はない

  • 2

    クリミア軍用空港「攻撃成功」の真相──これで「戦局」は完全に逆転した

  • 3

    【写真】プールサイドで家族と過ごす白い水着姿のチョープラー

  • 4

    デリヘルで生計立て子供を私立の超難関校へ スーパ…

  • 5

    ロシアの進軍を止める?最強兵器「ハイマース」

  • 6

    「暗号資産」も「仮想通貨」も間違った呼び方です(…

  • 7

    超人気インド人女優が公開した家族写真 プールサイ…

  • 8

    【写真】発見された希少種と見られる甲殻類と、発見…

  • 9

    【動画】ロシア軍も押し返すハイマースのすべて

  • 10

    【動画】抜群のプロポーションも健在! ハイディ・ク…

  • 1

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ドラ「ちむどんどん」、沖縄県民が挙げた問題点とは

  • 2

    【写真】プールサイドで家族と過ごす白い水着姿のチョープラー

  • 3

    【映像】ガータースネークから幼蛇が出てくる瞬間

  • 4

    「これほど抗うつ効果が高いものは思いつかない」 世…

  • 5

    【画像】韓国のビーチに横たわる超巨大クラゲの写真

  • 6

    デリヘルで生計立て子供を私立の超難関校へ スーパ…

  • 7

    オタクにとって日本ほど居心地の良い国はない

  • 8

    台湾有事を一変させうる兵器「中国版HIMARS」とは何か

  • 9

    クリミア軍用空港「攻撃成功」の真相──これで「戦局…

  • 10

    全部で11匹、手負いのヘビが幼蛇を産む瞬間

  • 1

    【映像】ビルマニシキヘビの死体を運ぶアメリカアリゲーター

  • 2

    【動画】黒人の子供に差別的な扱いをしたとして炎上したセサミプレイスでの動画

  • 3

    【空撮映像】シュモクザメが他のサメに襲い掛かる瞬間

  • 4

    「彼らは任務中の兵士だ」 近衛兵から大声で叱られた…

  • 5

    【映像】接客態度に激怒、女性客が店員の顔にホット…

  • 6

    【映像】視聴者までハラハラさせる危機感皆無のおば…

  • 7

    【動画】近衛兵の馬の手綱に触れ、大声で注意されて…

  • 8

    史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ド…

  • 9

    【写真】プールサイドで家族と過ごす白い水着姿のチ…

  • 10

    ビルマニシキヘビの死体を担いで泳ぐワニが撮影される

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集
日本再発見 シーズン2
World Voice
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
ニューズウィーク日本版ウェブエディター募集

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月