コラム

独立直後のイスラエルが行ったパレスチナ人の「民族浄化」を告発する

2018年02月07日(水)16時09分
独立直後のイスラエルが行ったパレスチナ人の「民族浄化」を告発する

2018年2月6日、ガザの病院に病気の子を運び込むパレスチナ人女性 Mohammed Salem-REUTERS

<70年前、イスラエル建国後に起こった第1次中東戦争では何があったのか。ユダヤ人歴史研究者による『パレスチナの民族浄化』が実証的に検証する自国の戦争犯罪と、中東和平への希望>

今年は1948年の第1次中東戦争でイスラエルが建国され、パレスチナ難民が国際問題化して70年の節目である。最近では2017年12月にトランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことで国際的に強い反発が起きた。

20世紀最大の負の遺産と言われるパレスチナ問題だが、過去の歴史ではなく、なお中東と世界の平和を脅かす国際問題であることを印象づけた。

25年前の1993年にイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)が合意したパレスチナ暫定自治合意(オスロ合意)が崩れ、ブッシュ大統領、オバマ大統領の和平プロセスの働きかけは失敗し、さらにトランプ大統領の登場によって、状況はますます悲観的になっている。

しかし、なぜ、問題がこれほどこじれているのだろうか。和平実現については、1967年の第3次中東戦争の後に国連安保理が採択した決議242号が提起した「土地と和平の交換」の原則がある。イスラエルが占領した東エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザから撤退し、パレスチナとアラブ諸国がイスラエルの生存権、主権を認知するという枠組みである。

その原則に基づいたオスロ合意によって、パレスチナ国家が生まれ、イスラエルとパレスチナという2つの国が共存する「2国家解決」策を実現するはずだった。しかし、実際には和平は実現していないどころか、さらに遠ざかっている様相である。

パレスチナ問題について、私たちの問題の理解も、国際社会の問題へのアプローチも、何か根本的に間違っているのではないか、何か重要なことを忘れているのではないか。

そう考えるとき、目を開いてくれるのが、昨年11月に邦訳が出版されたイラン・パぺ著『パレスチナの民族浄化――イスラエル建国の暴力』(田浪亜央江・早尾貴紀訳、法政大学出版局)である。問題の発端であるイスラエル建国とパレスチナの難民化という紛争の始まりに焦点をあてた実証的研究書だ。

2006年に英語で出版され、中東やパレスチナ問題に関わる研究者やジャーナリストにとっては貴重な本である。私も英語で入手した。すでにアラビア語訳も出版されている。70年の節目の今年、やっと本書の邦訳が出たことは、日本人にこの問題の原点と出合う機会を与えるものである。

「今日の国際法では人道に対する罪とみなされる」

パレスチナ問題では、1947年11月の国連総会でパレスチナ分割決議が採択され、英国の委任統治領だったパレスチナはアラブ人国家とユダヤ人国家に分割されることになった。ユダヤ人勢力は決議を受け入れたが、パレスチナ指導部とアラブ諸国は拒否した。

英国の委任統治が終了した48年5月14日にイスラエルが独立を宣言し、アラブ諸国は翌15日にイスラエルに対する宣戦布告をした。戦争の結果、70万~80万人のパレスチナ人が難民化し、周辺諸国に出た。パレスチナ人はこのことを「ナクバ(大惨事)」と呼ぶ。

同書は、1948年のイスラエル建国にあたって、ユダヤ人勢力がアラブ人の町や村を破壊し、アラブ人を追放する計画を立案し、それを軍事的に実行したことを実証的に検証している。著者はイスラエルのハイファ生まれのユダヤ系イスラエル市民であり、歴史研究者として新たに公開された文書や自ら発掘した資料や証言をもとに、パレスチナ人に起こった「ナクバ=大惨事」の背後にある事実を追及しているのである。

プロフィール

川上泰徳

中東ジャーナリスト。フリーランスとして中東を拠点に活動。1956年生まれ。元朝日新聞記者。大阪外国語大学アラビア語科卒。特派員としてカイロ、エルサレム、バグダッドに駐在。中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『中東の現場を歩く』(合同出版)、『イラク零年』(朝日新聞)、『イスラムを生きる人びと』(岩波書店)、共著『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか』(集英社新書)。最新刊は『「イスラム国」はテロの元凶ではない』(集英社新書)。
ツイッターは @kawakami_yasu

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