最新記事

変異株

ワクチン接種後でも、新型コロナ変異株が感染する「ブレイクスルー感染」が確認される

2021年4月27日(火)20時00分
松岡由希子
新型コロナウイルスの変異株

新型コロナウイルスの変異株のイメージ Gilnature-iStock

<4月20日時点で8700万人以上が新型コロナウイルスワクチンを2回接種し、それでも新型コロナに感染した「ブレイクスルー感染」が7157人確認されている...... >

米ニューヨーク州で新型コロナウイルスワクチンを2回接種して2週間以上経過した417名のうち、51歳の女性と65歳の女性の計2名が新型コロナウイルスに感染した。いずれも、ワクチン接種後に罹患する「ブレイクスルー感染」とみられ、一部の変異株がmRNAワクチンを回避できるという懸念が確認された形だ。

米ロックフェラー大学の研究チームが2021年4月21日、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」で発表した。

ワクチン接種後の感染は変異株によるものだった

ロックフェラー大学では、2020年秋から、約1400名の全職員および学生を対象に、唾液によるPCR検査を週1回以上の頻度で実施している。職員のうち417名は、ニューヨーク州が定める接種順位に従って、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した「BNT162b2」または米モデルナの「mRNA-1273」のいずれかの新型コロナウイルスワクチンを2回接種している。

51歳の女性は、2021年1月21日に「mRNA-1273」の1回目を接種し、2月19日に2回目の接種を終えた。2回目の接種から19日後の3月10日、喉の痛みや鼻づまり、頭痛の症状がみられ、PCR検査で陽性と判明。女性の検体についてゲノム解析を実施したところ、獲得した免疫が効きにくくなる免疫逃避型(E484K)変異のほか、「T95I」、「del142-144」、「D614G」の3つの変異が確認された。

65歳の女性は1月19日に「BNT162b2」の1回目を接種し、2月9日に2回目の接種を終えた。3月3日、同居する未接種のパートナーが新型コロナウイルスに感染し、16日にはこの女性にも倦怠感や鼻づまり、頭痛の症状があらわれ、2回目の接種から36日後にあたる17日にPCR検査で陽性と判明した。ゲノム解析では、「T95I」、「del142-144」、「D614G」の3つの変異が確認されている。

両者ともに軽症で、自宅療養で回復したことから、新型コロナウイルスワクチンの接種は重症化の予防に有効であったとみられる。

「ワクチン接種後も新型コロナに感染するリスクは残る」

今回の研究結果によると、ワクチン接種後も新型コロナウイルスに感染するリスクはわずかながら残り、新型コロナウイルスを広げるおそれもある。しかし、ワクチン接種が感染を100%阻止するとは予想されておらず、ワクチンの重要性を損なうものではない。

研究論文の責任著者でロックフェラー大学のロバート・ダーネル教授は「ワクチン接種後であっても、新型コロナウイルス感染者との接触には慎重になるべきだ」と警鐘を鳴らす。

また、新型コロナウイルスの変異型が、ワクチンを突破することを防ぐために、達成可能な最短時間で、世界中のできるだけ多くの人の予防接種を行うことがいかに重要であるかを示している。ワクチン接種をする手段がない地域でウイルスが猛威を振るうと、新しい、より危険な変異株が出現するリスクが高まり、これにより、また新しいリスクがもたらされることになる。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、米国では2021年4月20日時点で8700万人以上が新型コロナウイルスワクチンを2回接種し、そのうち7157人で「ブレイクスルー感染」が確認されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

財新・中国製造業PMI、6月は50回復 新規受注増

ビジネス

マクロスコープ:賃金の地域格差「雪だるま式」、トラ

ビジネス

25年路線価は2.7%上昇、4年連続プラス 景気回

ビジネス

元、対通貨バスケットで4年半ぶり安値 基準値は11
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中