最新記事

動物

ホッキョクグマとハイイログマの交雑種「ピズリー」が確認されるように......その理由は?

2021年4月23日(金)18時50分
松岡由希子

ホッキョクグマとハイイログマの交雑種「ピズリー」は、2006年にはじめて確認された...... wikimedia

<ホッキョクグマは、海氷の減少に伴って内陸に移動し、ハイイログマとの交雑種「ピズリー」が頻繁に目撃されるようになった...... >

地球温暖化は、野生動物の生息地にも大きな影響を及ぼしている。主に北極圏の氷上でアザラシを捕食しながら生活するホッキョクグマは、海氷の減少に伴って内陸に移動する一方、北米大陸西部に広く生息していたハイイログマは、気候変動や人間の介入によって生息域が狭まり、カナダの高緯度北極圏でより頻繁に目撃されている。

2006年にはじめて確認された

2006年4月16日、カナダ北部の北極諸島にあるバンクス島のサックスハーバーで、ホッキョクグマとハイイログマの交雑種「ピズリー」が米国人ハンターによって狙撃された。ホッキョクグマと同様のクリーム色の厚い毛皮を持ちながら、目の周りや背中などにはハイイログマの毛色のような茶色のまだら模様がみられ、ハイイログマ特有の長い爪があった。

カナダ・ブリティッシュコロンビアの研究所「ワイルドライフ・ジェネティックス・インターナショナル」がDNAを鑑定したところ、ホッキョクグマのメスとハイイログマのオスとの異種交配によって生まれた個体であることが確認された。野生の「ピズリー」が見つかったのはこれが初めてだ。

この10年頻繁に目撃されるようになった

その後も、野生のピズリーが頻繁に目撃されている。カナダ・ノースウェスト準州政府らの研究チームが2017年5月に発表した研究論文では、カナダ北極圏で8頭のピズリーが確認された。いずれもホッキョクグマのメス1頭とハイイログマのオス2頭の異種交配によって生まれた子とみられる。

研究チームは、この研究論文で「気候変動に伴って、最近、イヌヴァアルイト居住地域(ISR)内の北極諸島で、ハイイログマがよく見られようになった。この10年にわたり、ハイイログマとホッキョクグマとの交雑種がこの地域で確認されてきたことで、親種における異種交配への影響について議論が広がっている」と述べている。

動物の死骸や植物の塊茎など、硬いものでも食べるハイイログマに比べて、ホッキョクグマは環境への順応性が低い。米ヴァンタービルト大学が2021年4月1日に発表した研究論文によると、ホッキョクグマは、約1000年前の北極温暖化の時期でさえ、柔らかい脂身と肉のみを食していたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高齢化は「時限爆弾」、経済成長を圧迫=EBRD

ワールド

タイ南部豪雨被害、救援物資乗せた空母派遣へ 洪水で

ビジネス

日経平均は小幅反発、ソフトバンクGが上値抑える

ビジネス

「ドイツ銀がリスクを軽視」、元行員の主張をECB検
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中