最新記事

アフガニスタン

迫る米軍のアフガン撤退 40年戦争の「正しい」終わらせ方

Leave Afghanistan As Planned

2021年3月31日(水)11時58分
マイケル・クーゲルマン(ウッドロー・ウィルソン国際研究センター上級研究員)

つまり、米軍撤退後にさらなる暴力が発生する可能性は極めて高い。だからこそ、アメリカはタリバンに米軍撤退後の停戦を受け入れさせるため、関係各国(特にタリバンの最大の後援者であるパキスタンと、アメリカと対立する中国、イラン、ロシア)や国際援助団体を巻き込んで外交的な全面攻勢に出るべきだ。

皮肉な話だが、アメリカに有利な要素もある。地域の大国の多くはアメリカのライバルであり、米軍撤退を歓迎するだろうが、撤退による情勢のさらなる不安定化は彼らの利益にならない。

そのため、これらの国々もアメリカと協力してタリバンに停戦をのませ、彼らが恐れる不安定化の悪影響(暴力の激化、難民の増加、麻薬取引の拡大、投資環境の悪化)を減らしたいと考えるはずだ。同盟国かライバル国かを問わず、共通の利益を追求する多国間外交を好むバイデン政権にとっても、この戦略は理にかなっている。

アメリカは残された交渉材料を最大限に活用すべきだ。例えば、タリバンが停戦を約束するまで、和平合意で決まった履行義務の残り部分の遂行を拒否する。タリバンが暴力を控え、交渉を継続しようとしなければ、将来の援助凍結をちらつかせるのも手だ。

望ましくないがましな道

アメリカはともかく強いメッセージを送るべきだ。米軍撤退後も停戦維持を求める国際世論を拒否すれば、タリバンが望む国際的な「承認」と正統性の獲得も危ういと強調すべきだ。

確かに米軍が撤退すれば、バイデン政権が最大の目標の1つに掲げるアフガニスタンでの対テロ作戦能力の維持が難しくなる。それでも、アメリカにはまだ選択肢がある。

まず、アフガン政府や近隣諸国(中国、インド、イラン、パキスタン、ロシア、中央アジア諸国)と協力して、テロリストの居場所や動きを監視する新たな情報共有メカニズムを構築すること。これらの国々の多くが、国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)を懸念している点で一致できる。

次にアフガニスタン国内のテロリストを攻撃するためには、近隣諸国に拠点が必要になる。最も理想的な候補はパキスタンとウズベキスタンだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中