最新記事

日本社会

日本の高学歴女性は未婚率が高いが、特にその傾向が強い地方は......

2021年3月10日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

都会の大学で学んだ女性が郷里に戻って来ないとしたら大きな損失 kali9/iStock.

<九州各県では大卒女性の未婚率が高く、女子の大学進学率が低い傾向が顕著に見られる>

未婚化が進んでいるが、その対策を図るうえでは、どういう人が未婚にとどまりがちかを知らなければならない。身も蓋もないが、男性の場合は低学歴・低収入といった属性の人だ。30〜40代男性を学歴別に分け、未婚者のパーセンテージを計算すると、中卒は34.4%、高卒は32.2%、大卒は27.5%、大学院卒は37.3%となる(総務省『就業構造基本調査』2017年)。大学院卒が大卒より比率が上がるのは、いわゆる高学歴ワーキングプアが多くなるためかもしれない。

だが女性にあっては傾向が反対で、学歴が上がるほど未婚率は高まる。高卒は21.2%、大卒は24.5%、大学院卒は37.3%と4割近くにもなる。学のある女性は敬遠される、相手の男性への要求水準が高くなる、結婚で失うものが多くなる、という事情が考えられるだろう。

高学歴女性の未婚率に地方による違い

できる女性の未婚率は高くなる。今となってはよく知られているが、地域による違いもある。30〜40代女性全体の未婚率、同年齢の大学・大学院卒女性の未婚率を、東京と鹿児島(筆者の郷里)について出すと以下のようになる。2010年の『国勢調査』から計算した数値で、配偶関係不詳は分母から除いている。

①:30~40代女性全体の未婚率
 東京=29.4%  鹿児島=21.5%
②:30~40代の大学・大学院卒女性の未婚率
 東京=30.7%  鹿児島=30.3%

東京でも鹿児島でも、高学歴女性の未婚率の方が高い。その差は鹿児島で大きく、東京では1.3ポイントであるのに対し、鹿児島では8.8ポイントも開いている。筆者が中学の時、数学がバリバリできる女子生徒が、教師から「嫁のもらい手がなくなるぞ」とからかわれていた。偏見を承知で言うなら、それだけ男女平等意識が遅れていると言えなくもない。

上記の①と②を全都道府県について計算し、結果を視覚的なグラフで表してみる。横軸に②、縦軸に②と①の差分をとった座標上に47都道府県のドットを配置した。前者は高学歴女性の未婚率の絶対水準、後者は全女性と比した相対水準だ。

data210310-chart01.png

右上は大卒女性の未婚率が高く、かつ全女性との差も大きい県だ。見事というか、沖縄を筆頭に九州の全県がこのゾーンに位置している。九州では高学歴女性は結婚しにくい、こんなことが言えるかもしれない。

疎まれる、失うものが多い......。学のある女性への眼差しというか、こういうことを意識して、都会の大学で学んだ女性が郷里に戻ってこないとしたら大きな損失だ。同一コーホート(集団)の10代前半と20代後半の女性人口を対比して、若年女性の回復率という指標を県別に出すと、九州の県で軒並み低いという傾向はない。だが高学歴女性に限ると、状況は異なるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:観光客の回復遅れるベルリン、「観光公害な

ビジネス

アングル:黒人向け美容業界にトランプ関税の打撃、ウ

ビジネス

植田日銀総裁「賃金に上昇圧力続く」、ジャクソンホー

ワールド

冷戦時代の余剰プルトニウムを原発燃料に、トランプ米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で見つかった...あるイギリス人がたどった「数奇な運命」
  • 4
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中