最新記事
軍事

ドローン優位はいつまで?――戦争の未来を左右する「指向性エネルギー兵器」

NEW ANTI-DRONE WEAPONS

2026年1月7日(水)18時13分
マシュー・パウエル (英ポーツマス大学講師)
首都キーウの住宅を攻撃するロシアのドローン

首都キーウの住宅をピンポイント攻撃するロシアのドローン(25年6月) AP/AFLO

<戦争は技術の短距離走ではなく、終わりのない追いかけっこだ。次にゲームチェンジャーになるのは何か>

これまでの多くの紛争がそうだったように、ロシアとウクライナの戦争は双方に技術革新を強いてきた。当初は戦車や迫撃砲が戦場を支配し、歩兵は塹壕に身を隠すという20世紀の戦争のような光景が展開された。

ところが1年もすると、安価で遠隔操作が可能なドローン(無人機)が投入され、調達コストがかかる(そして一つでも破壊されれば大打撃となる)最先端の戦車や対戦車ミサイル、戦闘機に取って代わるようになった。今や数十〜数百機のドローンが空を埋め尽くすスウォーム(群れ)攻撃も見られる。


ドローンは戦争の性質を変えた。最近では地上部隊が攻撃にさらされるエリアは前線から約10〜15キロにまで広がり、どんなに要塞化した拠点や塹壕、それに装甲車両も、かつてほど安全ではなくなった。

ウクライナ政府の発表によると、同国の犠牲者の60〜70%は、ドローン攻撃によるものだという。

ロシアのドローン・ミサイル攻撃を受けたキーウ(2025年11月)

さらにドローンは、前線をはるかに越えた場所を攻撃することも可能にしてきた。

例えば、ウクライナは2025年6月、ロシア側に潜入させたトラックからドローンを飛ばすことで、首都キーウから8000キロも離れたロシアの空軍基地を攻撃した。ロシアもキーウを含むウクライナ領内をドローンで攻撃してきた。

攻撃だけではない。中には情報収集や監視、偵察といった役割を担うことができるドローンもある。こうしたドローンは、戦場の情報や状況認識をリアルタイムに操作者に伝えて、作戦の立案や指揮、統制、通信も支援している。

徘徊型ドローンは、その狙われにくさも手伝って、射弾観測にも使われている。

こうしたことから、ドローンは戦争の在り方を大きく変えて、今後長きにわたり空中戦の未来に影響を与えると主張する専門家は少なくない。

だが、そのような主張は、新しい技術が戦争に活用されると、さほどたたないうちに、それに対抗するイノベーションが生まれて、その有効性を低下させるという歴史的事実を見落としている。

レーザー兵器と電磁波兵器

例えば戦車は、第1次大戦中の1916年、ソンムの戦いで初めて使用された。連合国軍にとっては著しい戦力増強となったが、ドイツ軍は18年には対戦車砲を投入して戦車の威力を大きく低下させた。

ウクライナでも同じような傾向が見られる。例えば、最も原始的な方法としては、市民や兵士が通る道路にトンネルのように網を張って、ドローンの攻撃を阻止する試みがなされている。

newsweekjp20260107032134.jpg

英軍が導入を計画するレーザー兵器「ドラゴンファイア」は抜群の命中精度を誇る(スコットランド) BRITISH DEFENCE MINISTRYーZUMAーREUTERS

高度な技術を使った対抗措置も開発が進んでいる。英海軍は最近、ドローンなどの小型兵器を無効化するレーザー兵器「ドラゴンファイア」を27年にも配備する計画を発表した。

目標を視認できないと攻撃できないという制約はあるが、1発当たりのコストは10ポンド(約2000円)程度で、1キロ離れた場所にある1ポンド硬貨ほどの大きさの標的に命中させる精度があるという。

このような指向性エネルギー兵器(ミサイルなど飛翔体によらずエネルギーを標的に直接照射する兵器)が配備されれば、ドローンの能力は大きくそがれるだろうから、「ドローンは空中戦の未来だ」という主張にも疑問が生じる。

イギリスは別の指向性エネルギー兵器の開発も進めている。これは高周波数帯の電磁パルス兵器で、爆発地点から見通せる範囲の電子機器に電磁波として侵入して内部から破壊する。

悪天候でも運用できるし、特定のエリアにある複数の標的を同時に攻撃できるという点で、ドラゴンファイアよりも使い勝手はいい。

英国防省の対ドローン兵器「RF DEW」

ただ、電磁パルス兵器はそのエリアにある電子機器全てを破壊してしまうため、味方がいないことを十分確認する必要がある。

戦争は技術の急速な進歩をもたらすという教訓は、21世紀の戦争でも変わらないようだ。

従って、ドローンは今後も重要な兵器であり続ける可能性が高いが、戦争の在り方に本当に革命をもたらし、有人の戦闘機を時代遅れにするかどうかは、まだ分からない。

The Conversation

Matthew Powell, Teaching Fellow in Strategic and Air Power Studies, University of Portsmouth

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.


【関連記事】
ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空軍も口を閉ざすステルス無人機の正体


ニューズウィーク日本版 日本人が知らない AI金融の最前線
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月3号(2月25日発売)は「日本人が知らない AI金融の最前線」特集。フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに[PLUS]広がるAIエージェント

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


資産運用
「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒れる今こそ投資家が目を向ける「世界通貨」とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

AIで失業増えるとは限らず、新たな機会も=リッチモ

ビジネス

米は財政赤字削減を、今年の経済成長安定=IMF

ワールド

北朝鮮の金総書記、米朝関係は米国の態度次第 韓国と

ワールド

米、ベネズエラ原油のキューバ転売認可へ 国務長官は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 2
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違憲とした「単純な理由」
  • 3
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された「恐怖の瞬間」映像が話題に
  • 4
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 5
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 6
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 7
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中