最新記事

感染症対策

医学的な意味はゼロ? 外国人に対する中国の「肛門PCR検査」、その理由と実態

2021年3月4日(木)15時34分

中国に入国する外国人の間で、新型コロナウイルスの肛門検体採取PCR検査を実施されることに不快感が広がっている。単に迷惑なだけでなく、心的外傷(トラウマ)を負ったとの苦情も寄せられ、果たして必要なのかという議論が巻き起こりつつある。写真は上海虹橋国際空港、1月撮影 REUTERS

中国に入国する外国人の間で、新型コロナウイルスの肛門検体採取PCR検査を実施されることに不快感が広がっている。単に迷惑なだけでなく、心的外傷(トラウマ)を負ったとの苦情も寄せられ、果たして必要なのかという議論が巻き起こりつつある。

中国国営メディアによると、首都・北京や上海、港湾都市の青島などが一部外国人に対し、鼻孔や咽頭に加えてこうした肛門によるPCR検査を行っている。

肛門検体採取検査とは

中国疾病対策センターの説明では、この検査は無菌の綿棒を肛門内部に3センチから5センチ挿入した後、やさしく回転させて取り出す。

なぜ、肛門なのか

中国の一部の医師は国営メディアに対し、新型コロナウイルスの痕跡が検知可能な時間が気道より肛門の方が長いため、確実に検知できる方法だと話している。

ただ、結果が陽性であっても、検査を受けた人が必ずウイルスを拡散し得るわけではない。香港大学のジン・ドンヤン教授(ウイルス学)はロイターに、複製できず他人に感染させられない不活性化したウイルスの痕跡が見つかっても、陽性と判明する場合があると述べた。

欧州のある専門家は、確かにウイルスは鼻孔からよりも肛門から採取した検体において、より長時間とどまるとはいえ、回復期にある患者の場合、もはや感染リスクを生み出さない以上、あえて肛門検査をする医学的な意味はないとの見方を示した。

対象は外国人だけか

日本政府は今週、一部の日本人旅行者に対して肛門検査が行われていることについて「多大な心理的苦痛」を受けていると述べ、検査免除を要請した。

韓国外務省の報道官は2日、韓国人旅行者は現在、中国当局が直接肛門から検体を採取する代わりに、自身で採取した検体を提出できるようになっていると説明した。

米新興メディアのバイスは今年2月、米国務省高官の話として、米国の外交官がこの検査を受けたと伝えた。中国外務省はこの報道を否定している。

もっとも肛門検査が行われたのは、外国人だけではない。1月に中国国内で新型コロナ感染者が増大した際には、幾つかの都市が一部地元住民に対して検査を実施した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中