最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナのスーパー・スプレッダーになりやすい3つの要因が明らかに

2021年2月16日(火)18時01分
松岡由希子

新型コロナウイルスのスーパー・スプレッダーになりやすい要因を分析した...... toeytoey2530-iStock

<ハーバード大学などの研究チームは、スーパー・スプレッダーになりやすい要因は「年齢」、「BMI(肥満度)」、「新型コロナウイルス感染症の経過」という3つの要因と関連していることを示した......>

重症急性呼吸器症候群(SARS)や腸チフス、エボラ出血熱など、これまでに発生したアウトブレイクでは、多くの人々に感染を広げる「スーパー・スプレッダー」が存在した。一般的には、20%の感染者が感染症例数の80%に関与していると考えられている。

「年齢」、「肥満度」、「感染症の経過」の3つの要因

米ハーバード大学、テュレーン大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究チームは、「スーパー・スプレッダーは小さな呼吸器飛沫を大量に吐き出す性質がある」ことに着目し、新型コロナウイルスのスーパー・スプレッダーになりやすい要因を分析。

「年齢」、「BMI(ボディマス指数、肥満度を表す)」、「新型コロナウイルス感染症の経過」という3つの要因がこの性質と関連していることを示した。一連の研究成果は、2021年2月23日発行の「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表されている。

研究チームは、米国に在住する19〜66歳の健康な成人194名を対象に、呼気粒子の観察研究を実施。その結果、高齢でBMIが高いほど、呼気に含まれる呼吸器飛沫の数が多く、18%に相当する35名が被験者全体の呼気中のバイオエアロゾル(生物由来の粒子状物質)の80%を占めていた。これは、他の感染症の流行でみられる「2対8の法則」とも類似する。

感染後7日目、ウイルス粒子がもっとも小さくなった

研究チームは、アカゲザルとミドリザルの計8匹を新型コロナウイルスに感染させ、経過を観察した。その結果、感染後7日目にウイルス価が最も高くなり、14日目には減少した。また、新型コロナウイルス感染症が進行するにつれてウイルス粒子は小さくなり、ウイルス価のピーク時には、その大きさがわずか1ミクロンとなった。

小さな粒子は、呼吸や咳、発話で、より排出されやすく、空気中に長時間漂い、より遠くまで移動し、吸い込んだときに肺の奥まで届きやすい。

研究論文の責任著者でテュレーン大学のチャド・ロイ教授は「新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者であっても、呼気中のエアロゾルは増加する。気道のウイルス感染によって気道粘液が弱まり、ウイルスの感染粒子が移動しやすくなるのではないか」と考察している。気道での呼吸器飛沫の生成には個人差がある。

若い人は高齢で肥満の人よりも呼吸器飛沫を排出しづらいが......

研究論文の筆頭著者でハーバード大学のデイビッド・エドワーズ博士は「今回の研究結果では、若い人は高齢で肥満の人よりも呼吸器飛沫を排出しづらいことが示されたが、サルでの実験結果をふまえれば、誰もが、新型コロナウイルスに感染すると、大量の呼吸器飛沫を排出するおそれがある」と指摘している

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中