最新記事

ISSUES 2021

ジャレド・ダイアモンド寄稿:人類はコロナ禍をチャンスに変える

2020年12月24日(木)16時15分
ジャレド・ダイアモンド(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)

コロナは人類の救いに?(ブラジルの地下鉄で消毒作業を行う作業員) UESLEI MARCELINO-REUTERS

<全ての国がコロナの脅威から解放されるまで、どの国も安全ではない。このグローバルな問題で世界中の人々が一致協力できれば、気候変動などその他の課題にも立ち向かえるはずだ。特集「ISSUES 2021」より>

新型コロナウイルスは今も世界中で猛威を振るっている。私たちの多く(場合によっては半数以上)が感染し、その一部は命を落とし、通常の社会活動は遮断され、大半の海外旅行は中止になり、経済と貿易は大打撃を受けている。

数年後、この重大な危機が沈静化した後の世界はどう変わっているだろうか。
20201229_20210105issue_cover200.jpg
一部の国では、新型コロナから私たちを守るワクチンの接種が始まった。ただし、残念ながら今後の見通しは不透明なままだ。

ワクチンの予防効果は感染症によって差がある。例えば、天然痘や黄熱病などのワクチンは、数十年あるいは生涯にわたって予防効果が持続する。だが、インフルエンザの場合は1年未満だ。マラリアやエイズ(後天性免疫不全症候群)については、ワクチン開発に巨額の投資が行われているが、まだ完成していない。

インフルエンザウイルスは頻繁に変異を繰り返し、流行するウイルス株が変化するため、毎年新たなワクチンを開発しなければならない。また、ポリオや天然痘のワクチンが接種を受けた全ての人を守るのに対し、インフルエンザやコレラのワクチンは接種者の約50%しか守れない。

従って新型コロナワクチンへの期待は大きいが、その効果を現時点で予測することは不可能だ。

それでも、効果的なワクチンがすぐに接種可能な状態になったとしたら、世界はどう変わるのか。最悪のシナリオから最良のシナリオまで、さまざまな可能性が考えられる。

最悪のシナリオの兆候は既にいくつも浮上している。開発されたワクチンの効果が確認できたとしても、全世界の77億人に接種する77億回分のワクチンを短時間で製造し、流通させることはできない。当初は供給が限定されるはずだ。

では、誰が最初にワクチン接種を受けるのか。医療従事者を別にすれば、富裕層の有力者が貧しく力のない人々より先にワクチン接種の権利を手に入れると想定される。

そのような利己主義が通用するのは、有効なワクチンを最初に完成させた国の中だけだが、国際的な利己主義が横行する事態も十分に考えられる。ワクチンを完成させた国は間違いなく自国民を優先する。

「持続可能な世界」の契機に

既にマスクという前例がある。感染拡大の第1波の際にヨーロッパでマスクが不足し、中国からの輸入品が到着したとき、各国は自国民のためにマスクを確保しようと激しい奪い合いを演じた。

さらにワクチンの場合は、最初に完成させた国が政治的・経済的ライバル国への供給を保留する可能性もある。

【関連記事】
特効薬なき対コロナ戦争、世界は中国の「覚悟」に学ぶべき

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中